父親のマンションを代理で売却
2022年7月、長年住んでいた神奈川県川崎市のマンションを売却しました。
権利者は父親。
しかし、父親は昭和ひとケタ生まれの高齢で、歩けないので家から出られず、独力で売却するのが困難なため、すべてぼくが代理で行ないました。
ネットで調べても、代理人による売却がどういう流れで、どこがポイントなのか、情報が少ないので、ご紹介したいと思います。
賃貸は負担が多く、売却1本に
今回のマンション売却は、「賃貸」にするか「売却」にするかという選択から始まりました。
まず、賃貸にする場合、どのような準備が必要で、どれくらいの収入が見込めるかが問題でした。
偶然にも、ぼくの職場の人が、自分が所有するマンションを貸していることがわかったので、彼に訊いてみました。
すると――
- 毎月の家賃収入は8万円
- そこから管理費3万円を払う
- 管理をお願いしている会社に家賃の1割に当たる8000円を払う
- 修繕積立金や保険料といった必要経費を1万円払う
- 差し引くと3万円くらいの利益にしかならない
これを聞いただけでも、「割に合わんなぁ」と思いましたが、さらに彼が言うには――
- 貸す前にハウスクリーニングと壁紙の貼り替えが必要で、100万円かかった
- 固定資産税を払わなければいけない
- 借主の過失によらない部屋の修繕は当然、貸主が負担しなければいけない
- 借主の退去時にはリフォームが必要で、最低でも40~50万円かかる
- 確定申告しなければいけない
インターネットで「マンション 賃貸に出す」とか「マンション 賃貸 売却 比較」といったキーワードで調べると、似たり寄ったりの事例がいくつか見当たりました。
また、ウチのマンションによく出入りしているリフォーム業者のホームページを観ると、200万以上の費用がかかるという計算になりました。
ウチは、昭和50年代後半に建てられた大規模マンションで、台所や洗面所などは当時のままだったので、貸すとなると、そうした箇所を中心にリフォームしたり新調したりする必要があったからです。
この時点で賃貸の選択肢は消えました。
父親と家族にも了承してもらい、売却1本で進めることになりました。
仲介と買取、それぞれの長所と短所は?
売却には、「仲介」と「買取」があります。
「仲介」というのは、不動産会社に物件の買い手を探してもらう売却方法です。
「買取」というのは、売却したい物件を不動産会社に買い取ってもらう売却方法です。
そこで、両者の長所と短所をインターネットで調べてみました。
まず、仲介ですが、ポスト投函されるチラシで、ウチと間取りや広さが同じ物件を見てみると、2000万円前後の売出価格の物件が何件かありました。
また、ウチと同じ広さでも、2500万円前後で売り出されている物件もありました。
後者の物件は、台所を対面式キッチンに改造したり、内装を現代風にしたりしていました。
つまり、そのリノベーションの費用を上乗せして売り出しているのでした。
仲介の場合は、価格を決める主役は売主ですから、売れたときの利益は大きくなります。
仲介手数料はかかりますが、少しでも高く売りたいなら、仲介1本です。
ちなみに、仲介手数料は、どの業者でも「(売却額×3%+6万円)+消費税」という計算式になります。
たとえば、2000万円で売れた場合、仲介手数料は72.6万円になります。
しかし、仲介の場合、買い手がいつ現れるかはまるでわかりません。
売り物件が多いということは、ライバルが多いということなので、なおさらです。
売れるまでは、管理費がかかりますし、マンションの役員も回ってきます。
内覧のときは、できるかぎり購入希望者を直接応対する必要もあるでしょう。
ぼくは山梨県に住んでいて、来るのに車で3~4時間はかかるので、負担に感じました。
一方、買取は、買い取るのが業者のため、金額の折り合いがつけば、すぐに売れます。
早ければ、ひと月かからないで売り切ることができます。
その代わり、買取価格は、仲介で売れたときの7割前後にしかならないのが一般的です。
では、ウチの場合、買取金額はいくらになりそうか?
インターネットで無料机上査定をしてくれる「すまいのステップ」に申し込んでみました。
申込方法は簡単で、マンションの所在地や広さ、間取りなど、簡単な情報を入力し、申込ボタンをクリックするだけです。
10分くらいで済みました。
翌日、さっそく、とある業者から返信が来ました。
「1100万円」
以前、父親の遺言書を公証人役場でつくったとき、マンションの評価額が1000万円だったので、〈やっぱりそんなものだろうな〉というのが感想でした。
これで、下調べはできたので、いよいよ業者に訪問査定をお願いすることにしました。
訪問査定を受け、長谷工の買取仲介に決める
訪問査定をお願いした業者は2社。
3~4社くらいに頼もうかとも思いましたが、ぼくの時間が限られているということと、業者を多くすると、高齢の父親が判断しにくくなる恐れがあるということで、2社にしました。
A社と(実際に売却を依頼することになった)株式会社長谷工リアルエステート(以下、長谷工)です。
選択基準は、チラシのポスト投函の数が多かった順です。
まず、A社に来てもらいました。
A社は、むかしからウチのマンションの売却を数多く手がけている老舗の業者です。
やって来たのは、50歳前後で、もうこの仕事を20年以上やっていますといった感じのベテラン男性営業マンでした。
その営業マンが言うには――
- 仲介でなるべく高く売ろうとする場合は、この部屋だとリフォームというより徹底的にリノベーションしなければ、なかなか買い手がつかない。その場合、費用は600万円前後かかる
- あるいは、まったく何の手も加えずに、割安感が出る1980万円くらいの売出価格でスタートし、リフォームあるいはリノベーション前提の買い手が現れるのを待つという方法もある。ただし、いつ買い手が現れるかわからないし、現れない場合は価格を下げていかざるをえない
- 買取の場合は、ざっと見たところ1100万円前後の価格になるだろう。どんなに高くても、1400万円が上限ではないか
- 今の売買の情勢は買取が主流になりつつある
- 最初、仲介で売り出し、買い手が現れない場合は買取へ変更するという方法もある
次に来てもらったのが長谷工です。
やって来たのは、男性の店長と女性の営業担当の2人でした。
長谷工は、チラシが多く入っていたので、ウチのマンションである程度の売買実績があるのかと思いきや、これからこのエリアに力を入れ、開拓していきたいとのことでした。
長谷工は、ウチのマンションにおける(他社による)売買の現況や実際の売買の流れ、自社の特長に関する資料を1冊のファイルにまとめてもってきました。
おかげで、A社の場合は資料がなかったのでメモをとりましたが、長谷工の場合は、ほとんどメモをとらずに済みました。
説明の内容はほぼA社と同じでしたが、長谷工の特徴は、「買取仲介」が得意らしく、その話が多かったことです。
「買取仲介」というのは、窓口の業者(今回の場合は長谷工)を通して複数の業者にアプローチしてもらい、もっとも高い買取価格を提示した業者に買い取ってもらうという売却方法です。
通常の買取の場合は仲介手数料がかからないのに対して、買取仲介は窓口業者に(既述の計算式により算出する)仲介手数料を支払う必要がありますが、その仲介手数料を支払ってもなお、ふつうに買い取ってもらうよりも多い金額が手元に残る可能性があります。
また、部屋には使わなくなった家具がけっこう残っていて、処分する必要がありましたが、A社は不用品回収業者の紹介にとどまるのに対し、長谷工は無料で処分してくれるとのことでした。
内覧も業者だけなので、鍵を1本預けておけば、あとは長谷工のほうでやってくれるという話でした。
訪問査定から1週間後、長谷工から提示された机上の買取価格は、長谷工の直接買取だと「1300万円」、他社からの最高提示額だと「1500万円」とのことでした。
すでに述べたように、買取の相場は仲介の7割前後なので、1500万円はまずまずの価格だと思いました。
また、同時に、マンション売買においては一度市場に出た物件は価格が伸びにくくなるという傾向があるため、仲介から買取に切り替えると、最初から買取に出した場合よりも価格が下回る恐れがあることを教えてもらいました。
その後、父親をはじめ家族に、A社と長谷工から聞いた話の内容を伝えました。
家族会議では、リフォームなしの仲介か買取かとなりましたが、仲介はいつ売れるかわからず、それまでのあいだ金銭的な負担(管理費や固定資産税)がかかるが、買取の場合は短期間でケリをつけられる。
そんなにお金に執着しているわけでもないので、買取でいいではないか。
それも、ふつうの買取価格より高値がついた買取仲介のほうでいいではないか。
A社も買取仲介はやっているらしいが、それを得意としている長谷工に頼むのがいいだろうということで、わりとあっさり長谷工に買取仲介を頼むことに決まりました。
専属媒介契約を結ぶ
長谷工に決めてからちょうど2週間後、長谷工のお2人に実家へ来てもらいました。
目的は「専属媒介契約」を結ぶこと。
売買は特定の1社を通して行わなければいけないからです。
事前に用意しておいてくださいと言われたのは、権利者である父親の認印、身分証明書(運転経歴証明書など顔写真つきのもの)、権利証、マンションの鍵1本の4点です。
権利証は、この段階ではまだ見せるだけで、ほんとうに当該物件の権利をもっているかどうかの確認のために必要となります。
また、マンションの鍵を渡すのは、買取業者による査定と不用品処分業者の立ち入りのためです。
当日は、父親同席のもと、「専属媒介契約書」にぼくが代理で父親の住所、氏名を署名したあと、購入希望者の費用負担で建物状況調査をすることに同意するための「建物状況調査についての質問票」、住居と設備の状況に関する報告書、鍵の預かり証などへ記入していきました。
報告書は、過去の改築、雨漏り、シロアリの害、給排水の故障、電波障害、騒音・振動・異臭……などの有無や、給湯、台所、エアコン、浴室、洗面、トイレ……などの設備の状態について、微に入り細に入りチェックしていかなければいけなかったので、この報告書の記入にいちばん時間がかかりました。
この段階では、以下のことについて確認しました――
- 買主(買取業者)から売買代金や条件の提示があり、こちらが納得すれば、売買契約となる。売買契約の際に、売買代金の一部を手付金(現金)として買主から受け取る。その手付金のなかから、仲介手数料の半金を長谷工に支払う
- 売買契約をしたら、約1ヵ月後に「残代金受領・引き渡し」を行なう。その際、売買代金から手付金を除いた残代金を受け取り、マスターキー等残りの鍵を買主に渡す。また、仲介手数料の残りの半金を長谷工に支払う。これをもって、買主に所有権が移転する
- 「残代金受領・引き渡し」の日をもって、ぼくらはマンションに立ち入れなくなるので、不用品としたくない物はそれまでに引き上げる
売買契約を結ぶ
専属媒介契約の数日後、売買契約に必要になる書類や持ち物、支払い項目について改めて確認しました。
- 権利証
- 委任状(長谷工から権利者へ郵送→権利者の実印を押印→売買契約時に代理人が持参)
- 印鑑証明書(権利者)
- 固定資産税納付書(直近)
- 認印(代理人)
- 身分証明書(代理人)
- 印紙代(1万円、売却価格によって変動)
- 仲介手数料(半額)
その際、買い取り業者が3社、内覧するとの報告も受けました。
数日後、長谷工から連絡があり、業者の買値でもっとも高かったのはB社の「1560万円」ということでした。
1560万円だと仲介手数料が580,800円になり、手元に残るのが1500万円強になるので、仲介手数料分を持ちますよという意味の提示だと受け取りました。
その旨、実家へ連絡し、B社に買い取ってもらうことになりました。
ちなみに、B社は、中古物件を買い取り、リノベーションして売り出すのを専門に行う業者のようでした。
1週間後、長谷工の店舗へ赴き、売買契約を行ないました。
買主のB社も同席し、「不動産売買契約書」をはじめ、さまざまな書類に署名していきました。
あまりに多くの書類に署名したので、今となってはどんな書類があったかおぼえていませんが、権利者(父親)の住所・氏名を書いたあと、「代理人として」と書き、続けて代理人(ぼく)の住所・氏名を書くというスタイルだったので、ふだん書類はパソコンで作成し、手書きで書くことがほとんどないぼくには苦行以外の何物でもなく、手が疲れてプルプル震えてしまいました(汗)
書類への署名が終わると、B社から手付金100万円を現金で受け取り、今度はそこから長谷工へ仲介手数料の半額(290,400円)と、印紙代1万円を支払いました。
手元に残った70万円は、帰り際、父親の銀行口座へ振り込みました。
長谷工の店舗から銀行まで、歩いて5分くらいの短い距離でしたが、70万円もの大金を現金で持ち歩くことなどなかったので、極度に警戒してキョロキョロしすぎ、端から見れば明らかに挙動不審で、よく職務質問されなかったなと思います(笑)
残代金の受け取りと引き渡し
売買契約から3週間後、権利の変更手続きを行なってくれる司法書士が、実家の父親のもとを訪れました。
代理人決済の場合、事前に司法書士による権利者の本人確認が必要となるためです。
事前に実家で用意してもらったのは、権利証、実印、身分証明書(マイナンバーカード等写真つきのもの)です。
このときに、権利証は司法書士へお渡ししました。
これで、代理人による「残代金受領・引き渡し」が行なえることになります。
1週間後、ぼくは指定の金融機関へ赴き、長谷工と買主(買取業者)と司法書士を交え、最後の手続きに臨みました。
持ち物は、身分証明書(代理人)、鍵(マスターキーを含むすべて)、認印(代理人)、残代金を振り込む(権利者の)口座の通帳です。
手続きでは、「取引完了確認書」や「売買物件引渡確認書」などに署名していきます。
このときも、売買契約のときと同じく、権利者(父親)の住所・氏名を書いたあと、「代理人として」と書き、続けて代理人(ぼく)の住所・氏名を書くというスタイルでしたが、前回ほどには書類は多くなく、おかげで手が震えるほどに疲れることはありませんでした(安堵)
鍵も、マスターキーを含め、すべて買主へ渡します。
一連の書類による手続きが済むと、残代金を受け取る段階になります。
あらかじめ振込口座を指定してあったので、事前に金額を確認した残代金がきちんと振り込まれているか、近くの金融機関へ行って、通帳記入を行ないました。
振り込まれた金額は、1560万円(売値)-100万円(手付金)-290,400円(仲介手数料半金)-41,000円(登記費用)+74593円(清算金)=14,343,193円でした。
このうち、登記費用というのは司法書士に支払うお金で、内訳は「登記名義人表示変更」「事前確認費用」「住居表示実施証明書取得」「消費税」です。
「事前確認費用」というのは、別途、権利者(父親)のもとへ出向いた際の費用です。
また、「住居表示実施証明書」をすでに持っている、あるいは、自分で取得する場合には「住居表示実施証明書取得」の費用はかかりません。
一方、清算金というのは、固定資産税・都市計画税と管理費等の清算金のことになります。
引き渡し日を基準に、剰余分を買取業者が返金してくれるわけです。
残代金の受け取りが済めば、売買契約はすべて完了です。
関係者の方々にお礼を言って帰るときは、正直、ホッとしました。
ひとつ大きな仕事を無事に終えたという安堵感です。
この日は日帰りの日程で、電車での長距離の往復は疲れましたが、家へ帰ってからの1杯は、いつもよりも五臓六腑に染みわたる感じがしました。
マンション売却の相談は「長谷工の仲介」がオススメ
今回、売却の窓口になっていただいた長谷工リアルエステートの対応は、とても適切でスピーディーでした。
こちらの複数回に及ぶ細かい質問にも、その都度快く回答していただき、感謝しています。
おかげで、気持ちよく売却を終えることができました。
マンション売却を検討中の方であれば、ぼくは迷わず「長谷工の仲介」へ相談することをオススメします^^