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いろいろな哲学の名著のエッセンスを1冊で見渡す
いわゆる〝哲学の名著〟には、『ソクラテスの弁明』『方法序説』『純粋理性批判』など、いろいろな著作があるが、それぞれの名著にはそれぞれの解説書があり、名著を理解しやすくしてくれる良質な解説書が必ずある。
そうした解説書を読めば、対象としている名著の要点を要領よく把握することができる。
しかし、どんなにわかりやすい解説書でも、それを哲学の名著ごとに1冊1冊読んでいくのは、けっこう骨が折れる。
数ある哲学の名著のなかから、自分はどれから挑んでいけばいいか、その突破口をさぐるには、すこぶるコスパかつタイパが悪い。
そこで、その1冊さえ読めば哲学の名著の数々をとりあえずざっくり理解できる本へのニーズというものが生まれてくる。
それぞれの哲学の名著について、決して詳しくなくていいから、何が書いてあるか、その要点だけかいつまんで解説してくれればいいというニーズである。
そうしたニーズに応えてくれる解説書を紹介する。
オススメの解説書
『すっきりわかる! 超解「哲学名著」事典』
最初にオススメするのは、『すっきりわかる!超解「哲学名著」事典』である。
著者は、『すっきりわかる!超訳「哲学用語」事典』『世界一わかりやすい哲学の授業』『結果を出したい人は哲学を学びなさい』など、一般読者向けに数々の哲学関連書を精力的に著している哲学者の小川仁志氏だ。
小川仁志氏は、大学院に入学する前から、ヘーゲルの『法の哲学』に取り組んでいたそうだが、理解するまでに何年もかかったらしい。
しかし、あるとき、その『法の哲学』の内容を2000字で要約するという仕事を引き受け、できあがった自分の原稿を見て、「もしこれが大学院に入る前に存在していたらなぁ」と思ったという。
その経験があって、小川仁志氏は、「いつの日か哲学の古典の要約をまとめて人々に提示することを心に誓いました」(以上、「はじめに なぜ名著解題なのか」)という。
本書『すっきりわかる!超解「哲学名著」事典』で取り上げられている哲学の名著は、古くはプラトンの『ソクラテスの弁明』、アリストテレスの『ニコマコス倫理学』から、新しいものではフーコーの『監獄の誕生』、ネグリ&ハートの『〈帝国〉』にいたるまで、48冊にのぼる。
とりわけ、17世紀以降の哲学の名著が数多く取り上げられている。
どの名著も、だいたい2000字で紹介されているため、数分あれば、目当ての名著の輪郭をつかむことができる。
とても重宝する1冊だ。
『哲学の名著50冊が1冊でざっと学べる』
著者は、『哲学と人類』『答えのない世界に立ち向かう哲学講座』など、一般読者向けに哲学の現在を伝える著作を数多く著わしている哲学者の岡本裕一朗氏である。
本書『哲学の名著50冊が1冊でざっと学べる』では、タイトルどおり50冊紹介されているが、そのラインナップをくらべると、セネカの『人生の短さについて』やエラスムスの『痴愚神礼賛』など、他書ではあまり取り上げられない名著や、メイヤスーの『有限性の後で』やマルクス・ガブリエルの『なぜ世界は存在しないのか』といった、まさに私たちが生きる今の時代に書かれた哲学書が含まれるなど、特徴が際立っている。
また、「通りいっぺんの解説をするのではなく、『根本的に何をねらったのか?』に光を当て、どんな議論や批判が寄せられたかに注目した」(「本物の教養が身につく!『哲学の名著』珠玉の50冊」)というのも、本書『哲学の名著50冊が1冊でざっと学べる』の大きな特徴である。
これにより、名著の内容だけでなく、その背景や哲学史的意義も理解しやすくなっている。
『すっきりわかる!超解「哲学名著」事典』と併せて参照すると、より有益だ。
『闘うための哲学書』
上記2冊が、哲学の名著の内容や背景を紹介しているのに対して、本書『闘うための哲学書』は、小川仁志氏と萱野稔人(かやの・としひと)氏という2人の哲学者が、哲学の名著22冊を紹介しながら、哲学の楽しさや意義を伝えるという内容である。
プラトンの『饗宴』やアリストテレスの『ニコマコス倫理学』、デカルトの『方法序説』など、哲学の名著として〝定番中の定番〟が紹介されている一方で、ルソーの『社会契約論』、カントの『永遠平和のために』、ミルの『自由論』など、社会哲学系の名著も紹介されている。
また、福澤諭吉の『学問のすすめ』や西田幾多郎の『善の研究』、和辻哲郎の『風土』という日本の哲学書が紹介されているのも、大きな特徴である。
そうした哲学の名著を紹介しながら、2人がそれぞれの名著をどう読んだかを語り合っていく。
ときに名著を深堀りし、ときに批判し、ときに互いの意見をぶつけ合ったりしながら、エキサイティングな対話が繰り広げられる。
まさに、哲学することの楽しさや意義が、ひしひしと伝わってくる。
これから哲学の名著に挑もうとする人のモチベーションを大いに高めてくれる良書である。