哲学用語をきちんと理解するのにオススメの事典

哲学の名著の数々をざっくり理解したい人にオススメの解説書

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哲学用語はほんとうはむずかしくない

「アルケー」「ロゴス」「イデア」「定言命法」「弁証法」「エポケー」「現存在」「エピステーメー」……など、西洋哲学や現代思想には、初学者にはチンプンカンプンな用語が頻出する。

哲学の原典(翻訳)はもちろん、入門書や解説書でも、こうした哲学独特の用語がよく出てくる。

そのため、たいていの人は、こうした用語を目にするだけで〝哲学はむずかしい!〟と感じ、なかには哲学を敬遠するようになる人もいる。

哲学用語がむずかしいのは、明治時代に日本に西洋哲学が輸入されたときに、独自の意味を指し示すため、むずかしい言葉に翻訳されてしまったからだと言われている。

そして、その難解な用語を、日本の哲学界は、まるで変更不可能であるかのようにあつかってきた。

そのため、いまだに数多くの難解な哲学用語が頻出するのである。

しかし、その難解さが、かえって〝深遠な真理〟を語っているかのような雰囲気を醸し出すため、インテリ気取りの輩(やから)のなかには、難解な哲学・思想用語を(わざと?)著作や会話のなかに散りばめ、高尚ぶる者さえいる。

ぼくがまだ高校生だった1983年に、当時、京都大学助手だった浅田彰氏の『構造と力』が出版されたときが、そうだった。

この本は、構造主義ポスト構造主義の解説書なのだが、哲学思想書としては異例の15万部も売り上げるベストセラーとなり、「ニュー・アカデミズム」ブームが起きた。

インテリ気取りの輩たちは『構造と力』を片手に、会話のなかに難解な哲学・思想用語を織り交ぜ、知性をひけらかした。

まるで、〝哲学・思想は自分たちの専売特許だ〟とでも言わんばかりだった。

そんな輩は哲学用語を一般人があつかうことができない〝高尚なツール〟にして優越感に浸りたいがために、そういうスタイルをとったのだろう。

ところが、哲学用語の原語、つまり、もともとのドイツ語やフランス語、英語は、高尚な言葉などでは決してなく、むしろ、わりとふつうの言葉が多いらしい。

だから、欧米では、哲学が多くの人びとに開かれているのである。

最近、日本でも、やっと、哲学用語を誰にでもわかる言葉に置き換えたり、〝翻訳〟したりしようとする動きが加速してきた。

この動きが進んでいけば、哲学がもっと身近になり、哲学のおもしろさに気づき、自分の頭で考えようとする人が増えるのではないだろうか。

ということで、むずかしい哲学用語(の意味)を理解しやすく解き明かし、一般の人たちにも哲学を広めていこうと努める事典を紹介しよう。

オススメの事典

『すっきりわかる!超訳「哲学用語」事典』

本書『すっきりわかる!超訳「哲学用語」事典』は、前の記事で紹介した『すっきりわかる!超解「哲学名著」事典』の姉妹書である。

著者は、『世界一わかりやすい哲学の授業』『世界のエリートが学んでいる教養としての哲学』といった入門書を数多く著している哲学者の小川仁志氏である。

小川仁志氏は、哲学を数多くの人びとに広めようと努めている第一人者である。

その小川仁志氏の手腕が存分に発揮された哲学用語の事典が、本書『すっきりわかる!超訳「哲学用語」事典』だ。

収録されている哲学用語は、「アルケー」「プシュケー」といった古代哲学の用語から「脱構築」「アフォーダンス」など現代思想の用語にいたるまで、150語にのぼる。

1つ1つの哲学用語の解説は、大づかみだけれども、そのぶん簡潔でとてもわかりやすい。

中学生でも充分に理解可能だ。

それでいて、その用語の意味だけでなく、関連する哲学者の思想や周辺事項の知識も得ることができる。

哲学初学者の必携書ナンバーワンである。

『語源から哲学がわかる事典』

本書『語源から哲学がわかる事典』の著者は、『認知哲学』『人間科学の哲学』といった著作がある哲学者の山口裕之氏である。

著者いわく、「入門書や概説書ではいちいち説明しないような基本単語について、意味や語源、そうした言葉が作られた問題意識や文脈について、専門用語はなるべく使わず、日常的な日本語を使って説明」(「あとがき」)しているのが特徴だ。

特に充実しているのは、古代ギリシア哲学のパルメニデスから近代哲学のデカルトにかけてである。

哲学用語の本来の意味がわかってくると、それにつれて西洋哲学の全体像もおもしろいように見えてくる。

いわゆる〝哲学用語事典〟とは異なるが、巻末に収録された簡単な解説がついた用語集が、用語事典の役割を果たしている。

〝入門書を読んでも哲学がどういうものかよくわからなかった〟という人にこそ読んでいただきたい。

『岩波 哲学・思想事典』

本書『岩波 哲学・思想事典』は、1998年の出版と古く、むずかしい言い回しも多い。

しかし、いまだ日本でもっとも質量ともに充実した哲学用語事典である。

収録されている用語は4000を超えるが、哲学・思想関連の用語のみならず、社会思想、科学思想、宗教思想、芸術理論、文学理論といった関連領域の用語や、西洋以外のインド、中国、朝鮮、日本、イスラームの思想の用語も収められている。

また、近現代に関する用語ほど、解説が行き届いているのも特徴だ。

著名な哲学書に関する解説は、文献解題として読める。

いたれりつくせりである。

古書で10000円以上するが、哲学・思想を専攻し、きっちり勉強したい人は、購入必須であろう。

そうでない人は、大学の図書館や自治体の図書館などで活用するとよい。

哲学の名著の数々をざっくり理解したい人にオススメの解説書

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