京都には石仏が無数
京都は石仏の街です。
京都には数万体の石仏があると言われるほど、寺院の境内や道端に数多くの石仏を見かけることができます。
とにかく無数にあるのです。
その多くは江戸時代につくられたもので、阿弥陀如来や地蔵菩薩が中心です。
今回は、そんな京都の石仏のうちのごくごく一部ですが、観てきた石仏をご紹介します。
清水寺
京都観光といえば、まずは清水寺(きよみずでら)というくらい、清水寺はチョ~有名な寺院です。
そのため、1年中、数多くの観光客でにぎわいます。
ぼくが参拝した日も、修学旅行の学生を中心ににぎわっていました。
![多くの参拝客でにぎわう清水の舞台](https://kurokoji.com/wp-content/uploads/2023/02/005_01_IMG_2167.png)
たいていの人は、清水寺に参拝したとき、本堂→阿弥陀堂→奥の院→音羽の滝とめぐるのではないでしょうか。
しかし、ぼくの目当ては違いました。
定番の拝観コースからは外れた、本堂手前脇にある成就院の前の「千体石仏群」です。
![清水寺の石仏群](https://kurokoji.com/wp-content/uploads/2023/02/005_02_IMG_2159.png)
![清水寺の石仏群](https://kurokoji.com/wp-content/uploads/2023/02/005_03_IMG_2162.png)
![清水寺の石仏群](https://kurokoji.com/wp-content/uploads/2023/02/005_04_IMG_2163.png)
幅50メートル、奥行20メートルくらいはあるでしょうか。
それくらいの広さのところに、石仏がわんさか安置されています。
しかし、訪れる人は、ぼく以外にはおらず、ひっそりとしていました。
これらの石仏の多くは、もともとは京都の街中にまつられていましたが、明治時代に廃仏毀釈(はいぶつきしゃく)が起きると、石仏を守ろうとした人びとが、ここに運んできたのだそうです。
室町時代から江戸時代にかけてつくられた石仏が多いようです。
![彫りがけずれた石仏たち](https://kurokoji.com/wp-content/uploads/2023/02/005_05_IMG_0029.png)
![彫りがけずれた石仏たち](https://kurokoji.com/wp-content/uploads/2023/02/005_06_IMG_0036.png)
![彫りがけずれた石仏たち](https://kurokoji.com/wp-content/uploads/2023/02/005_07_IMG_2161.png)
上掲の写真からわかるように、多くの石仏は、長年の風雨の影響で彫りがけずられ、輪郭や顔立ちがぼやけ、何の仏なのかわからなくなっていました。
お寺のホームページによると、阿弥陀如来、地蔵菩薩、観音菩薩、大日如来、釈迦如来など、いろいろな仏が混在しているそうです。
そのような石仏のなかにも、まだ比較的新しいのか、はっきりと種類がわかる像もありました。
![千手観音菩薩](https://kurokoji.com/wp-content/uploads/2023/02/005_08_IMG_0034.png)
![十一面観音菩薩](https://kurokoji.com/wp-content/uploads/2023/02/005_09_IMG_0030.png)
![抱き合いほほえむ石仏](https://kurokoji.com/wp-content/uploads/2023/02/005_10_IMG_0038.png)
清水寺を参拝した際には、ぜひ千体石仏群も観ることをオススメします。
金戒光明寺
清水寺の次に訪れたのが、金戒光明寺(こんかいこうみょうじ)です。
この寺には、仏像界でもめずらしい「五劫思惟阿弥陀如来」の石仏があります。
境内のやや奥、極楽橋を渡って墓域へ通じる階段のたもとに、五劫思惟阿弥陀如来はたたずんでいました。
![五劫思惟阿弥陀如来:遠景](https://kurokoji.com/wp-content/uploads/2023/02/005_11_IMG_2187.png)
![五劫思惟阿弥陀如来:正面](https://kurokoji.com/wp-content/uploads/2023/02/005_12_IMG_2189.png)
一見してすぐにわかるのは、頭の上のでっかい〝帽子〟です。
![五劫思惟阿弥陀如来:螺髪](https://kurokoji.com/wp-content/uploads/2023/02/005_13_IMG_2190.png)
これは、すべて髪の毛です!(驚)
如来の頭の、くるくると丸まった髪の毛を「螺髪」(らほつ)と言いますが、それがやらた伸びた姿なのです。
なぜ、そんなに伸びたかというと、「五劫」=約21億6000万年ものあいだ、衆生救済について思惟していたからだそうです。
さすが阿弥陀如来。
スケールが常人とは根本的に違います。
でも、そんなに長いあいだ髪の毛が伸びたのなら、身体全体がすっぽり隠れるくらいになりそうなものですが……
まあ、そんなのを像にしたら、でっかい蛹(さなぎ)のようになって、阿弥陀如来だなんてまるでわからなくなってしまうから、やめたのかも……?
子安観世音(太閤の石仏)
次に訪れたのが、「子安観世音」(太閤の石仏)です。
![子安観世音:遠景](https://kurokoji.com/wp-content/uploads/2023/02/005_14_IMG_2193.png)
銀閣寺の西側にあたる北白川の道端に、ドテっと鎮座ましましています。
![子安観世音:全体像](https://kurokoji.com/wp-content/uploads/2023/02/005_15_IMG_0067.png)
高さ2メートルはあるかと思われる大きさです。
この子安観世音、どこかで観たおぼえがあると思ったら……
![石地蔵](https://kurokoji.com/wp-content/uploads/2023/01/IMG_1691.png)
これ↑↑↑
「石仏ファン興奮必至! 山梨県に点在する〝巨大石地蔵〟は一見の価値あり」の記事で紹介した「石地蔵」です。
なんとなく造りが似ていると思いません?
![子安観世音の顔](https://kurokoji.com/wp-content/uploads/2023/02/005_16_IMG_0068.png)
![石地蔵の顔](https://kurokoji.com/wp-content/uploads/2023/01/IMG_1685.png)
顔は似ていませんが……
子安観世音は別名「太閤の石仏」と呼ばれています。
むかしむかし安土桃山時代、豊臣秀吉は、この観音像が気に入り、聚楽第(じゅらくだい)へ連れていき、毎日拝んでいたからだそうです。
でも、この観音像が毎晩のように「北白川に帰りたい」と泣くので、やむなく元の場所に戻したのだとか。
いったい、どんな声で泣いたんでしょうか?
子安観世音の姿から想像するに、重低音で「うっ、うっ、うっ……」だったのではないかと推測します。
そうだとすると、ちょっとこわい。
ぼくなら、あわてて北白川へ戻します(汗)
![子安観世音](https://kurokoji.com/wp-content/uploads/2023/02/005_17_IMG_2196.png)
なお、子安観世音のうしろには、〝お孫さん〟(?)たちがいっぱいいらっしゃいました。
百萬遍知恩寺
最後に訪れたのが、百萬遍知恩寺です。
知恩院とは別寺です。
ここには、金戒光明寺と同様、五劫思惟阿弥陀如来像があります。
![五劫思惟阿弥陀如来:遠景](https://kurokoji.com/wp-content/uploads/2023/02/005_18_IMG_0071.png)
境内の裏手、寺墓地のなかに、他の墓にまぎれるようにして、五劫思惟阿弥陀如来はひっそりとたたずんでいらっしゃいました。
案外、見つけるのに苦労しました(汗)
![五劫思惟阿弥陀如来:全体像](https://kurokoji.com/wp-content/uploads/2023/02/005_19_IMG_2203.png)
年季が入って、だいぶ劣化しています……
見方によっては、〝味がある〟雰囲気をかもし出しているとも言えます。
![五劫思惟阿弥陀如来の顔](https://kurokoji.com/wp-content/uploads/2023/02/005_20_IMG_0072.png)
顔はまだきれいなのですが、肝心の螺髪の彫りが浅くなってきています。
金戒光明寺の五劫思惟阿弥陀如来像とくらべると、こちらの螺髪は控えめな大きさでした。
この知恩寺には、他に2体の五劫思惟阿弥陀如来像があるのですが、事前の調査不足で、この1体だけを観るにとどまりました。
他の2体については、次の楽しみにしたいと思います。
この行程は歩かないほうがいい(汗)
今回の石仏行は、清水寺から知恩寺まで、ずっと歩き通しでした。
歩数計では、約25000歩を示していました。
ハイキングかなんかで歩き慣れている人であれば大したことはないのでしょうが、ふだんあまり歩いていないぼくたち夫婦にとっては、足腰がかなりきつかったです(汗)
途中、小1時間くらいの昼食休憩をはさんだものの、さすがに疲れました。
おかげで、その日の夜はぐっすり眠れましたが……
当日は、9月末だというのに、まるで真夏のような暑さだったことが、疲労を倍増させたとは思うものの、できれば地下鉄やバス、タクシー、自家用車、自転車といった交通手段を併用することをオススメします。