『ソクラテスの弁明』をはじめて読む人にオススメの翻訳書&解説書

『ソクラテスの弁明』をはじめて読む人にオススメの翻訳書&解説書

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『ソクラテスの弁明』の本選び【先に結論】

最初の翻訳には、読みやすい本文と詳しい解説を備えた光文社古典新訳文庫版がおすすめです。文字だけでは不安なら漫画版から、訳と解説を一冊でじっくり読みたいなら岸見一郎氏の『シリーズ世界の思想』版から始めてもよいでしょう。

向いている人難易度特徴
光文社版初めて原典を読む人やさしい~標準読みやすい新訳と詳しい解説
ムーセイオン版読みやすさと手軽さを重視する人やさしい電子版で簡潔に読める
新潮文庫版裁判から最期まで続けて読みたい人標準『クリトン』『パイドン』も収録
漫画版文章だけでは不安な人やさしい物語と要点を先につかむ
西研 特別授業哲学する意味を考えたい人やさしい問い・対話・議論の意義を学ぶ
岸見一郎『ソクラテスの弁明』原典と解説を一冊で深く読みたい人標準全文新訳を章ごとに解説
『ソクラテスの弁明』翻訳・解説6冊の選び分け

初心者向けの読む順番

  1. 文字中心の原典に不安があれば、漫画版で裁判と弁明の流れをつかむ
  2. 光文社版など、翻訳を一冊だけ選んで本文を最後まで読む
  3. 西研氏の特別授業で、問い、対話、よく生きることの意味を考える
  4. さらに深めたい場合は、岸見一郎氏の全文新訳・解説で章ごとに読み直す

翻訳を何冊も同時に買う必要はありません。最初は一冊を通読し、訳の違いや詳しい解釈に興味が出た段階で別の本を追加するのがおすすめです。

初学者の哲学書デビューに最適

ぼくが大学生のとき(1980年代後半)、パンキョー(一般教育科目)の哲学の先生は、「最初に読むべき哲学書は『ソクラテスの弁明』だ」と言った。

その理由について先生が何と言ったか、今となってはおぼえていない。

でも、今のぼくが推測するに、〝自分は何も知らないことを知っている〟=「無知の知」(もしくは「不知の自覚」)という地点から、ものごとの本質を追究するという哲学の原型が、『ソクラテスの弁明』のなかにはっきりと示されているからだと思う。

しかも、専門的な知識がなくても読めるということもあろう。

『ソクラテスの弁明』は、まさに、あのときのぼくのような哲学のテの字も知らない初学者の哲学書デビューにふさわしい。

さて、大学生のぼくは、先生の言葉に動かされ、本屋へ向かった。

当時は、岩波文庫版ほぼ一択である。

手にした感想は〈薄い!〉

感動の薄さ(涙)

150ページもない。

しかも、『クリトン』とかいう著作も収録されている。

お得!

ひと粒で2度おいしい。

しかし、そのときのぼくは、結局買わなかった。

お金がなかったからではない。

ページをパラパラとめくって中身を確認したら、訳文が硬くて、読む気が失せてしまったからである。

〈別に哲学科でもないし、読まなきゃいけない義理もない〉

法学部のぼくはそう思って、買うのをやめたのだ。

ちなみに、岩波文庫版の翻訳は、ぼくが読む気にならなかっただけで、現在でも評価が高い。

ところが、今はどうだ。

いろんな出版社から翻訳が出ている。

これがあのときなら、よかったのに……。

では、あのときのぼくが今、『ソクラテスの弁明』を読むとしたら、どの翻訳書を選ぶだろうか?

どの翻訳書がオススメか?

光文社古典新訳文庫版

向いている人:初めて原典を読み、本文と解説をバランスよく利用したい人
難易度:やさしい~標準
選ぶ理由:納富信留氏の読みやすい訳に、裁判の背景や対話篇を次に読むためのガイドが付いている

あのときのぼくが今、選ぶなら、光文社古典新訳文庫版だ。

国際プラトン学会会長を務めた経歴をもつ納富信留(のうとみ・のぶる)氏による翻訳の読みやすさもさることながら、本文に引けを取らない分量の解説が、内容の理解を大いに助けてくれる。

また、巻末の「プラトン対話篇を読むために」は、さらにソクラテスとプラトンの哲学を学びたい人にとってのよきガイドとなっている。

叢書ムーセイオン刊行会版

向いている人:電子版で、抵抗の少ない日本語を優先して読みたい人
難易度:やさしい
選ぶ理由:短い原典を手軽に読み始められる。販売価格は購入時に商品ページで確認したい

訳文の読みやすさをもっとも重視するなら、叢書ムーセイオン刊行会版だ。

読んでいて、いちばん抵抗なく読める。

訳者は、『ソクラテスに聞いてみた』という著作がある新進気鋭の哲学者・藤田大雪(ふじた・だいせつ)氏である。

電子版で手軽に読み始められる点も魅力だ。販売価格は変わることがあるため、購入前に商品ページで確認してほしい。

新潮文庫版

向いている人:ソクラテスの裁判後から最期までを一冊で追いたい人
難易度:標準
選ぶ理由:『ソクラテスの弁明』に加えて『クリトン』『パイドン』も収録している

新潮文庫版は、『ソクラテスの弁明』の他に、『クリトン』と『パイドン』が収録されている。

1粒で3度おいしい。

お得感が高い。

訳者は、ソクラテス・プラトン研究の重鎮であった田中美知太郎氏(1902-1985)である。

翻訳は、何十年も前にもかかわらず、ひらがなが多く、努めてくだけた文章に仕上がっている。

マンガ版

向いている人:哲学書が初めてで、文章だけの本を読むことに不安がある人
難易度:やさしい
使い方:裁判の展開と重要な言葉をつかみ、そのあとに翻訳本文を読むための入口にする

〈最初から文字だけの本というのはちょっと……〉という人には、マンガ版もある。

マンガのいいところは、ストーリー仕立てで、著作のエッセンスだけを凝縮している点だ。

心や記憶に残る印象的なフレーズも少なくない。

だから、内容が頭に残りやすい。

上記3冊を読む前の準備として読むと有効だろう。

オススメの解説書は?

翻訳書によっては良質な解説が収録されているものもあるが、あればなお理解の助けになる解説書を紹介したい。

西研『特別授業「ソクラテスの弁明」』

向いている人:原典の筋だけでなく、哲学は何のために行うのかを考えたい人
難易度:やさしい
選ぶ理由:高校生への授業を通して、問い、考え、議論することの意味を身近に学べる

西研 特別授業『ソクラテスの弁明』』は「NHK100分de名著」シリーズの1冊である。

著者は、『NHK出版 学びのきほん しあわせの哲学』『集中講義 これが哲学!』『哲学は対話する』など数多くの著作がある哲学者の西研氏だ。

高校生を対手に、『ソクラテスの弁明』を通して、〝問い、考え、議論する〟ことの重要性を説いている。

『ソクラテスの弁明』そのものの解説書というよりも、その背景について解説し、〝哲学とは何か?〟〝哲学は何のためにするのか?〟という問題に迫っている。

そのため、『ソクラテスの弁明』を広い視野からとらえることができる。

岸見一郎『プラトン ソクラテスの弁明』

向いている人:全文新訳と詳しい解説を一冊で読み進めたい人
難易度:標準
選ぶ理由:全33章の原典を章ごとに読み解き、ソクラテスの言動から哲学とは何かを考えられる

シリーズ世界の思想 プラトン ソクラテスの弁明』の著者は、『嫌われる勇気』『幸せになる勇気』『アドラー心理学入門』といった著作がある岸見一郎氏である。

〝アドラー心理学の人がなぜソクラテスの本を?〟と思う人がいるかもしれないが、岸見一郎氏はもともと古代ギリシア哲学が専門である。

裁判の進行に沿って原典を読み、その場で解説を聞くように理解を深められる構成になっている。

しかも、ベストセラー作家であるため、文章がうまいし、わかりやすく、スイスイ読み進められる。

この1冊を読むだけでも、ソクラテス哲学に関する理解はかなり得られるだろう。

よくある質問

『ソクラテスの弁明』初心者には、どの翻訳がおすすめですか?

本文の読みやすさと解説の充実度を両立した光文社古典新訳文庫版がおすすめです。訳と解説を交互にじっくり読みたい場合は、岸見一郎氏の本も候補になります。

岩波文庫版と光文社版では、どちらが読みやすいですか?

定番として長く読まれてきた訳を選ぶなら岩波文庫版、現代の読者が読みやすい訳と詳しい解説を重視するなら光文社版が向いています。

漫画版だけ読めば内容を理解できますか?

裁判の流れと主要な考え方をつかむには役立ちます。ただしソクラテスの言葉の運びを味わうには、漫画版のあとに翻訳本文を一冊読むのがおすすめです。

『ソクラテスの弁明』の次は何を読めばよいですか?

裁判後のソクラテスを描く『クリトン』、最期の日を描く『パイドン』へ進むと物語がつながります。プラトン哲学全体を知りたい場合は、入門書を一冊はさむとよいでしょう。

次にソクラテスとプラトンを学ぶ

「無知の知」という呼び方を含め、ソクラテスの哲学姿勢を正確に知りたい場合は、「不知の自覚」とは何かを参照してください。さらに対話篇を読み進めるなら、プラトン哲学のおすすめ入門書も役立ちます。

まとめ

  • 最初の翻訳には、読みやすい本文と詳しい解説のある光文社版がおすすめ
  • 文章だけでは不安なら漫画版を入口にして、その後に翻訳本文を読む
  • 『クリトン』『パイドン』まで一冊で読みたい場合は新潮文庫版
  • 哲学する意味を考えるなら西研氏、全文新訳と解説を深く読むなら岸見一郎氏の本を選ぶ
『ソクラテスの弁明』をはじめて読む人にオススメの翻訳書&解説書

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