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プラトンの本選び【先に結論】
初めて学ぶなら『プラトン哲学への旅』で『饗宴』の世界に触れ、そのあとに対話篇『ソクラテスの弁明』を読むのがおすすめです。思想全体を歴史的背景から知るなら岩波新書、現代的な問題と結びつけて考えるなら竹田青嗣氏の『プラトン入門』を選びましょう。
| 本 | 種類 | 向いている人 | 難易度 |
|---|---|---|---|
| プラトン哲学への旅 | 入門書 | 物語のように哲学を体験したい人 | やさしい |
| プラトン(岩波新書) | 入門書 | 古代ギリシアの背景と思想全体を学びたい人 | 標準 |
| プラトン入門 | 入門書 | プラトンの現代的な意義を考えたい人 | 標準 |
| ソクラテスの弁明 | 対話篇 | ソクラテスの哲学姿勢から入りたい人 | やさしい |
| 饗宴 | 対話篇 | 愛・美・イデアに興味がある人 | やさしい~標準 |
| メノン | 対話篇 | 問答法と「学ぶこと」を考えたい人 | やさしい~標準 |
初心者向けの読む順番
- 『プラトン哲学への旅』で、対話しながら考える感覚と『饗宴』の背景をつかむ
- 『ソクラテスの弁明』で、問い続けるソクラテスの姿勢を読む
- 『メノン』で問答法と学ぶことの意味を、『饗宴』で愛・美・イデアを考える
- 岩波新書か『プラトン入門』へ戻り、複数の対話篇を思想全体のなかに位置づける
入門書を何冊も続けて読むより、入門書と対話篇を一冊ずつ往復するほうが、プラトン自身の書き方と各解説者の解釈の違いをつかみやすくなります。
プラトン哲学を学ぶ意味とは?
哲学者・岸見一郎氏は『プラトン ソクラテスの弁明』で、哲学を理解する土台としてギリシア哲学を学ぶ重要性を説いている。
ギリシア哲学の中核に位置づけられるのは、ソクラテス、プラトン、アリストテレスである。
このうち、プラトンの師ソクラテスは、1冊も著作を遺していない。
そのため、哲学の出発点とされるソクラテスの哲学は、ソクラテスについて書かれている著作を資料にしなければいけない。
その資料の大半を占め、かつ、もっとも重要視されているのは、プラトンの著作=「対話篇」である。
一方、アリストテレスは、プラトン哲学を批判しながら、自身の哲学を展開している。
つまり、プラトン哲学を学ぶことは、ギリシア哲学の中核を学ぶことに等しい。
ホワイトヘッドは『過程と実在』で、ヨーロッパ哲学の伝統をプラトンへの「脚注」にたとえた。これは後世の哲学に独自性がないという意味ではなく、プラトンが提示した問いと発想の豊かさが、その後も繰り返し検討されてきたことを強調する比喩である。
つまり、プラトン哲学を学ぶことは、ギリシア哲学の中核を学ぶだけにとどまらず、西洋哲学の中核をも学ぶということなのだ――
岸見一郎氏が先生から言われたことは、およそこうした意味だったのではなかろうか。
では、そんなプラトン哲学をはじめて学ぶ人は、どの入門書を読めばいいだろうか?
オススメの入門書
『プラトン哲学への旅』
向いている人:予備知識なしで、古代の対話の場へ入るように読みたい人
難易度:やさしい
選ぶ理由:『饗宴』を題材に、愛(エロース)、美、イデア、哲学することを物語的に体験できる
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プラトン哲学の最初の入門書としてふさわしいのは、『プラトン哲学への旅』である。
著者は、国際プラトン学会会長を務めた経歴をもつ納富信留(のうとみ・のぶる)氏である。
本書『プラトン哲学への旅』では、プラトンの著作としては「中期対話篇」に位置づけられる『饗宴』が取り上げられている。
『饗宴』は、「イデア」の認識が「エロス」(ギリシア神話に出てくる愛の神)の力によってもたらされることを論じた書だ。
ある饗宴(シュンポシオン:社交のための宴会)に参加したソクラテスをはじめ何人かの人びとが、エロスについて語り合い、その本質に迫るという形式と内容になっている。
そして、本書『プラトン哲学への旅』は、「旅を愛するプラトンの友、名もなき哲学の徒」(「第一話 誘う」)と名のる語り手の「私」とともに、この『饗宴』の世界へ「トリップ」し、その〝現場〟を体験するというつくりになっている。
著者は、哲学を知識として説明するだけでなく、言葉による探究を読者が追体験できるように構成している。古代の対話の現場へ入るように読み進められる点が、本書の大きな特徴だ。
本書『プラトン哲学への旅』を読めば、哲学の本質である対話を疑似体験することができる。
また、西洋哲学に大きな影響を与えた「イデア」について、それが対話のなかでどのように語られているのか、目の当たりにすることができる。
小説を読むように読めるから、初学者にはとっつきやすい。
画期的なプラトン哲学の入門書だと思う。
『プラトン』(岩波新書)
向いている人:古代ギリシアの文化や神話を含め、プラトンを歴史のなかで理解したい人
難易度:標準
選ぶ理由:思想だけを要約せず、精神風土と死という視点からプラトン哲学を描く
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『プラトン』の著者は、古代ギリシア哲学の第一人者であった斎藤忍随(さいとう・にんずい)氏(1917/5/6-1986/1/21)である。
1972年に刊行されたロングセラーで、第23回芸術選奨文部大臣賞を受賞している。
プラトン哲学を生み出した古代ギリシアの精神風土、とりわけギリシア神話との関係をしっかりと描いている点、そして、死という視点からプラトン哲学をとらえている点が、大きな特徴となっている。
『プラトン入門』(ちくま学芸文庫)
向いている人:イデア、エロス、政治などを現代の問題と結びつけて読みたい人
難易度:標準
選ぶ理由:プラトンへの定型的な批判を見直し、普遍性や対話の可能性という独自の切り口から思想を読み直す
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『プラトン入門』の著者は、『はじめての哲学史』『哲学とは何か』『ニーチェ入門』など数多くの著作がある竹田青嗣(たけだ・せいじ)氏である。
本書は、プラトンを絶対的な真理を持ち込んだ思想家として単純に批判する見方を再検討し、異なる人間が言葉を通じて共通理解を探る可能性という観点から読み直す。
標準的な思想紹介だけでなく、現代哲学の問題と結びつけた独自の解釈を読みたい人に向いている。
初学者でも知的興奮を味わえる本書『プラトン入門』は、プラトン哲学の基礎を学ぶための入門書というよりも、〝プラトン哲学の新しい姿〟を案内する入門書だ。
オススメの対話篇
『ソクラテスの弁明』:問い続ける姿勢を知る
最初の一作には『ソクラテスの弁明』がおすすめだ。裁判での弁明を通して、ソクラテスがなぜ人びとに問いを投げかけ、どのように生きようとしたのかを比較的短い文章で読める。

『饗宴』:愛と美のイデアを考える
物語性と思想の両方を味わいたい人には『饗宴』が向いている。宴に集まった人びとの演説を通して、愛、欲望、美、イデアというテーマが展開される。
『メノン』:問答法と学ぶことの意味を知る
上記2作と並んでおすすめなのが『メノン』である。「徳は教えられるか」という問いから始まり、問答法、想起、探究のパラドクスなど、プラトン哲学の重要な論点へ進む。
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対話篇を初期・中期・後期に分ける方法では、初期から中期への移行期に置かれることが多い。ただし、制作年代や区分には研究上の議論がある。
〝ソクラテスの問答法は具体的にどういうものか?〟〝哲学をどこから始めればいいか?〟ということの見本が示されている。
光文社古典新訳文庫版の訳者・渡辺邦夫氏も、短い作品のなかに後のプラトン哲学を形づくる豊かな論点が含まれ、西洋哲学全体への導入にもなる作品として位置づけている。
よくある質問
プラトン初心者に一番おすすめの入門書はどれですか?
物語のように読みながら哲学の対話を体験できる『プラトン哲学への旅』がおすすめです。古代ギリシアの背景から体系的に知りたい場合は、岩波新書『プラトン』が向いています。
プラトンの対話篇は、どれから読むべきですか?
比較的短く、ソクラテスの哲学姿勢が伝わる『ソクラテスの弁明』から始めるのがおすすめです。その後は、問答法に興味があれば『メノン』、愛やイデアに興味があれば『饗宴』へ進みます。
入門書だけ読めば、プラトン哲学を理解できますか?
主要な考え方と全体像は学べますが、入門書には著者の解釈が含まれます。短い対話篇を一作でも読み、解説とプラトンの本文を往復すると理解が深まります。
プラトン全集は最初から必要ですか?
最初から全集をそろえる必要はありません。興味のある対話篇を文庫で読み、複数の作品を継続して学びたくなった段階で全集や選集を検討するとよいでしょう。
次にソクラテスと哲学用語を学ぶ
最初の対話篇を具体的に選ぶなら、『ソクラテスの弁明』のおすすめ翻訳と読む順番を参照してください。イデア、エロス、問答法などで止まったときは、初心者向け哲学用語辞典3選も役立ちます。
まとめ
- 最初の入門書には、対話を追体験できる『プラトン哲学への旅』
- 歴史的背景から学ぶなら岩波新書、現代的な読み直しなら竹田青嗣氏の『プラトン入門』
- 対話篇は『ソクラテスの弁明』から始め、『メノン』か『饗宴』へ進む
- 入門書と対話篇を一冊ずつ往復し、解説者の解釈と原典を比べる




