デカルト哲学をはじめて学ぶ人にオススメの翻訳書&入門書

デカルト哲学をはじめて学ぶ人にオススメの翻訳書&入門書

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目次

デカルト哲学は『方法序説』から始まる

神を哲学の〝出発点〟とする中世哲学を終わらせ、代わって、人間の認識や主観、理性、精神と呼べるものを哲学の〝出発点〟としたのが、デカルトである。

デカルトは、それまでのスコラ哲学やキリスト教神学をしりぞけ、「世間という大きな書物」のなかへ飛び込み、さまざまな体験をすることによって、〝新しい哲学〟を生み出した。

その際に大きな役割を果たしたのが、かの有名な「方法的懐疑」である。

〝あえて、わざと疑う〟という哲学的方法だ。

この「方法的懐疑」によって、デカルトは、誰もが「良識」や「理性」と呼べるものをもっともよく働かせるための〝出発点〟を確定しようとした。

そのために、デカルトは、自分が納得できるまで、人間の感覚や数学的真理など、あらゆるものを疑っていった。

その果てに、〝疑っている自分は、その存在を疑いようがない〟という結論に達し、哲学の〝出発点〟としての〝思惟する存在としての自己〟を見出すことになる。

これがデカルト哲学の基盤である。

そして、そのプロセスについて記しているのが、『方法序説』なのである。

『方法序説』を読めば、デカルトの発想の根源にじかに触れることができる。

だから、デカルト哲学を学ぶためには、先に入門書を読むよりも、『方法序説』を読むことから始めるのがよいと、ぼくは思う。

『方法序説』は哲学の予備知識なしに読める!

デカルトが生きた17世紀は、哲学書はラテン語で書くのがふつうだった。

ラテン語は、知識階級だけが理解する言語であった。

そのため、ふつうの人びとは、ラテン語を理解することができなかった。

しかし、デカルトは、そうした当時の習わしに逆らって、『方法序説』をフランス語で書いた。

多くの人びとに読んでもらおうとしたからである。

『方法序説』は、そうした意図のもとに書かれているため、哲学書としてはめずらしく、平易な文章で大変読みやすい。

プラトンの対話篇――たとえば『ソクラテスの弁明』――も、哲学の予備知識がなくても読みやすいが、それと同じくらい、いや、人によってはそれ以上に読みやすいかもしれない。

オススメの翻訳書

中公クラシックス版

ぼくがもっともオススメする翻訳書は、中公クラシックス版である。

なぜなら、1つは、巻頭に、デカルト哲学の概要がつかめる〝デカルト超入門〟的な、とてもわかりやすい解説が掲載されているからである。

これによって、デカルトが何のために何をどう考えたのか、また、デカルトの哲学が現代においてどのような意義があるのか簡潔に理解できるようになっている。

もう1つは、『哲学の原理』『世界論』が併録されていて、お得だからである。

特に『哲学の原理』は、認識の原理や自然学の原理を示して、近代科学の出発点となった著作で、デカルト哲学にとっては『方法序説』と同じくらい重要である。

なお、訳文は、ひらがなが多用されていて読みやすさを演出しているが、ぼくには若干の古くささが感じられた。

岩波文庫版

岩波文庫版は、これまでもっとも多くの読者に読まれつづけてきたロングセラーだ。

多くの大学の哲学教師も、『方法序説』といったら、これを薦めるのだと思う。

岩波文庫の翻訳書は硬質な文章のものが多いが、そのなかでも本書は、比較的、訳文が平易である。

中公クラシックス版とくらべても、そんなに硬くない。

定番で読みたいという人は、迷わず岩波文庫版を選ぶとよいだろう。

講談社まんが学術文庫版

〝いきなり文字だけの本を読むのはキツイ!〟という人には、マンガ版がある。

現代人のサラリーマンが家へ帰ると、そこにデカルトと、その執事を務めるしゃべるフクロウがいて、『方法序説』のレクチャーを受ける……という荒唐無稽な設定だ。

しかしながら、ストーリーは、『方法序説』の核をよくとらえており、これを最初に読んで大筋をつかんでおけば、翻訳書の内容をより理解しやすくなるはずだ。

オススメの入門書

『方法序説』を読んで、デカルトの発想の根源にじかに触れたら、次に、デカルト哲学の全体像を知りたいところだ。

『デカルト入門講義』

いちばんのオススメは、『デカルト入門講義』である。

著者は、『科学哲学者 柏木達彦の多忙な夏 科学がわかる哲学入門』『科学哲学者 柏木達彦のプラトン講義』『科学哲学者 柏木達彦の哲学革命講義』など小説仕立ての哲学入門書を著している哲学者の冨田恭彦氏である。

本書『デカルト入門講義』を読めば、デカルト哲学の全体像をかなり明瞭に理解することができる。

デカルトが生きた時代の紹介に始まり、『方法序説』の次に書かれた『省察』をていねいに読み解き、すべてを疑った果てに見出した〝思惟する存在としての自己〟を出発点にして、神の存在証明を経て、どのようにして世界を取り戻していったのかを明らかにする。

そして、デカルトの形而上学を理解するための問題を提示したうえで、その後の哲学に与えた「主観主義」の影響について論じている。

『デカルト入門』

デカルト哲学のコンパクトな入門書としては、小林道夫氏の『デカルト入門』がある。

この入門書も質が高く、良書である。

デカルト哲学をはじめて学ぶ人にオススメの翻訳書&入門書

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