カント『純粋理性批判』をはじめて読む人にオススメの翻訳書&解説書

カント『純粋理性批判』をはじめて読む人にオススメの翻訳書&解説書

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目次

『純粋理性批判』の翻訳・解説書【先に結論】

初めて『純粋理性批判』に挑戦するなら、入門・準備・本文・副読本の順に進むと挫折しにくくなります。全文を読む翻訳は光文社古典新訳文庫版、内容を丁寧に補う副読本は御子柴善之『カント 純粋理性批判』がおすすめです。

役割難易度向いている人
『プロレゴメナ』準備となる原典標準カント本人による短い説明から入りたい人
『カント哲学の核心』準備用の解説やさしい~標準『プロレゴメナ』を解説と一緒に読みたい人
光文社古典新訳文庫版本文の翻訳高い読みやすい日本語で全文に挑戦したい人
講談社まんが学術文庫版漫画による入口やさしい基本概念を物語からつかみたい人
『カント 純粋理性批判』詳しい副読本標準本文の流れに沿って理解したい人
『完全解読 カント『純粋理性批判』』論理を追う解説標準~高い全体の論理展開を最後までたどりたい人
『純粋理性批判』の翻訳・解説書6冊の使い分け

迷ったときの組み合わせ:御子柴善之『カント 純粋理性批判』を副読本にして、光文社古典新訳文庫版を少しずつ読み進めます。最初から全巻を急いで読む必要はありません。

初心者向けの読む順番

  1. カントの入門書または漫画版で、認識論の基本用語を知る
  2. 『カント哲学の核心』を手がかりに『プロレゴメナ』を読む
  3. 光文社古典新訳文庫版で『純粋理性批判』の本文へ進む
  4. 分かりにくい章を『カント 純粋理性批判』または『完全解読』で補う

いきなり『純粋理性批判』を読もうとしてはいけない!

カントの入門書を読んで、その全体像がわかったら、次はいよいよカント自身の著作にいどんでみよう。

でも、ここで、いきなり『純粋理性批判』を読もうとする人がいるかもしれないが、ちょっと待ってほしい。

たしかに、カントの著作のなかで、その哲学を理解するのにもっとも重要なのは『純粋理性批判』で間違いないのだが、難解きわまりないがゆえに、最初に読むべき著作ではないと、ぼくは思う。

実際、ぼくは大学生のとき、気軽な気持ちで『純粋理性批判』(岩波文庫版)を読み始め、すぐにめまいに襲われた経験がある(汗)

あれは、ほんとうに激しいめまいだった(笑)

ヘタをしたら、〝カントアレルギー〟をわずらっていたかもしれなかった。

せっかく哲学、しかもカントに興味をもった人が同じ〝症状〟をわずらってしまうとしたら、それはあまりにもったいなさすぎる。

だから、『純粋理性批判』、さらに言えば『実践理性批判』『判断力批判』は、カント哲学の基本構造をしっかり身につけてからいどんだほうがよい

『純粋理性批判』の前に読む2冊

『プロレゴメナ』

向いている人:『純粋理性批判』の問いを、カント本人の短い著作から知りたい人
難易度:標準
使い方:解説書と併読し、形而上学は可能かという中心問題を先に確認する

最初に読むカントの翻訳書は、『プロレゴメナ』がよいだろう。

この著作は、『純粋理性批判』の内容をカント自身が要約したものである。

つまり、カント哲学の核心が凝縮されているということだ。

なぜカントがそんな著作を書いたのかと言えば、『純粋理性批判』が提起した問い――〝形而上学がほんとうに可能かどうか〟――が当時の知識人たちにまるで受け取られず、しかもその内容が誤って受け取られたため、その問いと内容をより簡潔に伝えようとしたからである。

簡潔ゆえに、『純粋理性批判』のボリュームと比較すると、かなりスリムである。

〈簡潔でスリムになったのだから、当然、読みやすくもなっただろう〉

誰しも、そう思うはずだ。

しかし、『純粋理性批判』にくらべれば読みやすくはなっているが、やはり難解である(汗)

『カント哲学の核心』

向いている人:『プロレゴメナ』を一人で読むのが不安な人
難易度:やさしい~標準
使い方:『プロレゴメナ』の構成に沿った講義として読み、本文の重要箇所を確認する

そこで、その解説書としてオススメなのが、『カント哲学の核心』である。

著者は、前回の記事「カント哲学をはじめて学ぶ人にオススメの入門書」で紹介した『自分で考える勇気』の著者・御子柴善之(みこしば・よしゆき)氏だ。

プロレゴメナ』に即して、ポイントとなる文章を引用しつつ、ていねいな解説が加えられていて、大いに役立つ。

御子柴善之氏が『プロレゴメナ』をまるまる1冊、講義する授業を受けているかのような感覚で読める。

本書『カント哲学の核心』を片手に『プロレゴメナ』を読んでいけば、入門者であっても、カントの著作を挫折せずに読み通すことができる。

『純粋理性批判』には何が書かれているのか?

西洋哲学は、16世紀以降、ヨーロッパ大陸を中心に、デカルトからライプニッツへと継承された「大陸合理論」と、イギリスを中心に、ロックからヒュームへと継承された「経験論」とが対立していた。

「大陸合理論」は〝理性によってすべてを認識することができる〟と考え、一方の「経験論」は〝人間の知識はすべて経験によってのみ得られるのであり、実体の存在は疑わしい〟と考えた。

しかし、18世紀の哲学者カントは、「大陸合理論」に対しては〝理性ですべてを認識できるとはかぎらない〟と考え、「経験論」に対しては〝認識は対象があるから成り立つのであり、そうである以上、実体は存在する〟と考えた。

そして、こうした批判を経たうえで、カントは、次のように考えた――

実体=「物自体」は存在するが、理性はそのすべてを捉えることはできず、「現象」として現れた側面しか把握できない。しかし、人間の認識の形式は生まれつき共通なため、「現象」については誰もが認識を共有することができる。

こうした認識のあり方を、カントは、「認識が対象に従うのではなく、対象のほうがわれわれの認識に従わなければならない」と表現した。

また、この考え方の転換を「コペルニクス的転回」と呼んでいる。

その結果、自然科学が行なっているような、経験的に認識可能な世界の把握については理性は有効だが、神や魂の不死や自由などについては経験の範囲を超えているため、理性の認識の能力は及ばず、確実な学問にはなりえないと結論づけた。

こうしたカントの考え方が展開されているのが、『純粋理性批判』である。

おすすめの翻訳・漫画版2冊

『純粋理性批判』は、近代以降の哲学を理解するうえで、読み外せない必読書であるにもかかわらず、難解この上ない。

だから、『純粋理性批判』を読むなら、少しでも読みやすい翻訳を選びたい。

『純粋理性批判』の翻訳は、複数の出版社から刊行されている。

光文社古典新訳文庫版

向いている人:『純粋理性批判』の全文を読みやすい日本語で追いたい人
難易度:高い
選ぶ理由:全7巻に分かれ、段落番号と小見出しを手がかりに少しずつ読み進められる

オススメは、光文社古典新訳文庫版である。

理由は、図書館で他社の翻訳書と読みくらべてみて、「えっ、今のどういう意味?」と、ふたたび前の文章に戻って読み返す回数がいちばん少なかったから(笑)

それは、1つには、原著にはない小見出しがこまめにつけられていて、内容を把握しやすくなっているからである。

もう1つは、もっとも日常的な言葉で書かれているからだ。

実際に他社の翻訳と読み比べると、光文社古典新訳文庫版は、段落ごとの小見出しと日常的な言葉によって、日本語の意味を追いやすく感じた。原文の構造を残した訳には専門的な利点があるが、初めて通読する場合は、自分が読み進めやすい翻訳を選ぶことが大切だ。

講談社まんが学術文庫版

向いている人:原典の前に「感性」「悟性」「物自体」などを物語で知りたい人
難易度:やさしい
注意点:原典をそのまま漫画化した本ではなく、主要概念を理解するための入口として使う

〈最初から文字ばっかりはちょっと……〉と腰が引けるのであれば、講談社まんが学術文庫版がオススメだ。

ただし、『純粋理性批判』の内容をそのままマンガにしたわけでは決してない。

というか、そんなのムリである(汗)

そうではなくて、非モテ系男子がアンドロイドの女性と恋に落ちるという物語になっている。

そのなかで、『純粋理性批判』に出てくる「感性」「悟性」「統覚」「物自体」「現象」といったカントの基本概念が簡潔に示されているのだ。

『純粋理性批判』のポイントを伝えるための工夫がよくこらされていると思う。

最後は、少しほろっとするような展開になっている。

おすすめの解説書2冊

『純粋理性批判』を実際に読み進めていくのに、副読本として併読すると有益なオススメの解説書を紹介する。

『カント 純粋理性批判』(シリーズ世界の思想)

向いている人:本文の順序に沿って、一つずつ意味を確認したい人
難易度:標準
選ぶ理由:重要な文章を抜粋しながら、初読者向けに丁寧な説明が続く

カント 純粋理性批判』(シリーズ世界の思想)の著者は、カント研究者の御子柴善之(みこしば・よしゆき)氏である。

すでに紹介しているように、『自分で考える勇気』『カント哲学の核心』といった著作がある。

その御子柴善之氏が『純粋理性批判』の構成に従って、ポイントとなる文章を引用しながら、とてもわかりやすい言葉で解説が進んでいく。

決して研究者向けではなく、「カントの『純粋理性批判』に関心を抱いた人が、その中に入っていき、その中でさまざまに考えてみるための手がかりを提供することだけが本書の目的」(「はじめに」)だ。

まるでどこかのカルチャーセンターで、著者の「『純粋理性批判』を読む」という講座を聴講しているかのような読書感である。

『完全解読 カント『純粋理性批判』』

向いている人:『純粋理性批判』全体の論理展開を最後までたどりたい人
難易度:標準~高い
選ぶ理由:原典の構成に沿いながら、議論を一般読者向けに組み直して説明している

完全解読 カント『純粋理性批判』』の著者は、『プラトン入門』『ハイデガー入門』など数多くの著作がある竹田青嗣(たけだ・せいじ)氏だ。

その竹田青嗣氏が、まるでカントになりきって、『純粋理性批判』を、その構成に従いながら、一般読者にもわかるように抄訳したかのような解説書である。

「『純粋理性批判』における哲学的論理の展開を、最後まで明瞭にたどることができる」(「はじめに」)と、竹田青嗣氏は言う。

まさに、その言葉どおりの内容になっていると思う。

なお、本書でもむずかしいと感じたなら、竹田青嗣氏が同じ内容をより簡潔にまとめた『超解読! はじめてのカント『純粋理性批判』』から読んでいくとよい。

よくある質問

最初から『純粋理性批判』を読んではいけませんか?

読んではいけないわけではありません。ただし、用語と議論の構造が難しいため、入門書や『プロレゴメナ』で中心となる問いを確認してからのほうが、挫折しにくくなります。

『プロレゴメナ』と『純粋理性批判』の違いは何ですか?

『純粋理性批判』が認識と理性の限界を詳しく論じる主著なのに対し、『プロレゴメナ』は、その中心問題をカント自身がより短く提示した著作です。短くても簡単ではないため、解説書との併読が役立ちます。

漫画版だけで内容を理解できますか?

基本概念を知る入口として役立ちますが、原典全体の代わりではありません。漫画版で用語に慣れたあと、入門書や翻訳へ進む使い方がおすすめです。

解説書を1冊だけ選ぶならどれがおすすめですか?

初めて本文と併読するなら、御子柴善之『カント 純粋理性批判』がおすすめです。本文の構成に沿って重要箇所を確認しやすく、分からない章へ戻るための副読本としても使えます。

まずカント哲学の全体像を知りたい人へ

まだカントの認識論・倫理学・平和論の違いが分からない場合は、先にカント哲学を初めて学ぶ人向けの入門書から読むと、自分がどの著作に進むべきか判断しやすくなります。

まとめ

  • 準備として『プロレゴメナ』と『カント哲学の核心』を併読
  • 本文の翻訳は光文社古典新訳文庫版
  • 用語の入口には漫画版
  • 本文の副読本には御子柴善之『カント 純粋理性批判』

一度に理解しようとせず、入門・準備・本文・副読本の順に、自分のペースで読み進めてください。

カント『純粋理性批判』をはじめて読む人にオススメの翻訳書&解説書

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