ニーチェ哲学をはじめて学ぶ人にオススメの入門書

ニーチェ哲学をはじめて学ぶ人にオススメの入門書

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なぜニーチェ哲学は人気があるのか?

日本で、ニーチェほど人気がある哲学者は他にいないのではなかろうか?

そう思えるほど、ニーチェの入門書や研究書は数多い。

大型書店の棚を見ても、ニーチェの関連書は、プラトンカントウィトゲンシュタインの関連書に負けないくらいの充実ぶりである。

では、なぜニーチェは人気があるのだろうか?

それは、ニーチェが、存在がどうの、認識がこうの、善悪の基準はどうの……という議論に明け暮れてきた西洋近代哲学に対して、人間の生き方を示しているからだろう。

それも、ただの生き方ではない。

宗教や共同体が人びとに価値を与える力が低下し、〝何が価値あることか?〟〝何をするのが善いことか?〟と考える根拠が失われた現代に生きる人びとに対して、〝それでも、いかに生きるか?〟という新しいモデルを提示する。

ニーチェは、弱者の「ルサンチマン」(恨み)にもとづく道徳を広めたとして、キリスト教を徹底的に批判した。

しかし、ニーチェが批判したのはキリスト教だけではない。

そこから生まれた資本主義、民主主義、社会主義、国家主義、科学技術など、〝キリスト教的なものすべて〟である。

つまり、ニーチェは、それまでのヨーロッパの価値のすべてを批判したのだ。

日本も、ヨーロッパの価値の多くを受容してきた。

誰もが資本主義や民主主義や科学技術の発展を無批判に受け容れてきた。

しかし、そうしたものは今、私たちに多様性や豊かさをもたらした一方で、価値の乱立や格差や分断といった大きなひずみを生み出してもいる。

その結果、それまで受け容れてきた価値が大きく揺らいでいる。

そうした時代にいかに生きればよいのか?

現代人がニーチェの哲学に求めるのは、その〝答え〟なのであろう。

オススメの入門書

『ニーチェはこう考えた』

著者は、竹田青嗣氏の門下生で、『カント 信じるための哲学』といった著作がある石川輝吉氏だ。

ニーチェ哲学に生き方のヒントを求めるなら、まず本書『ニーチェはこう考えた』を読むとよいだろう。

ニーチェがどういう人でどんな人生を送り、どのような影響を受けたか、そして、その結果、どんな哲学を築いていったのかが、実にわかりやすく紹介されている。

石川輝吉氏は、ニーチェ哲学を「うじうじした『小さな人間のための哲学』」(「序章」)だと言っている。

逆境にめげない強い意志をもつ「超人」のような希有な者の哲学としてではなく、どこにでもいそうな小さくて無名な人間のための哲学としてニーチェを紹介している。

きっと自分自身と重ね合わせながら読むことができるはずだ。

『ニーチェ』(青灯社)

生き方どうこうよりも、純粋にニーチェ哲学の全体像を知りたいのなら、本書『ニーチェ』がオススメである。

著者は、『哲学マップ』『図説・標準 哲学史』など、初学者向けの入門書を数多く著している哲学者の貫成人(ぬき・しげと)氏だ。

帯に「中学生にもわかる」とあるが、さすがに中学生には無理かも……。

でも、高校生なら大丈夫、大学生なら充分にOKだ。

140ページの分量のなかで、「ニヒリズム」「永遠回帰」「超人」「力への意志」といった言葉に代表されるニーチェ哲学の基本的な考え方が理解できるすぐれた入門書だと思う。

ちなみに、ぼく自身がニーチェ哲学の全体像を復習したかったとき、本書『ニーチェ』は大いに役立った。

『ニーチェ入門』(ちくま学芸文庫)

著者は、ニーチェ研究者の清水真木(しみず・まき)氏だ。

本書『ニーチェ入門』の中心となるのは、「ニーチェのキーワード」「ニーチェ百景」「著作解題」の3つの章である。

「ニーチェのキーワード」でニーチェ哲学の中心概念を理解し、「ニーチェ百景」ではニーチェにまつわるエピソードが語られ、「著作解題」でニーチェの著作の意図や概略を知ることができる。

項目ごとに独立しているので、興味や好みや必要に応じて拾い読みすることもできる。

しかし、本書『ニーチェ入門』は、たんにニーチェ哲学を解説した入門書にはとどまらない。

ニーチェ哲学に生き方のヒントを求める人びとにも役立つことが意識されている――

 ニーチェを読むことの意義は、何よりもまず、著者とともに思索し、さらに、可能であるなら、著者とともに「生きる」ことにある。ニーチェの専門的な研究の本来の、そして最終的な課題もまた、この同じ点、つまり、思索を手がかりとする生存の充実――哲学を「生きる」こと――に求められねばならないはずである。私は、『ニーチェ入門』がこの課題の実現のためのきっかけになることを強く願っている。

「ちくま学芸文庫版のためのあとがき」

『これがニーチェだ』

著者は、『〈子ども〉のための哲学』『ウィトゲンシュタイン入門』など数多くの著作がある永井均氏だ。

本書『これがニーチェだ』は、ニーチェ哲学を体系的に紹介するといった類いの入門書では決してない。

どこまでも〝永井均にとってのニーチェ〟が描かれている。

要は、永井均氏によるニーチェ論だ。

しかし、永井均氏がニーチェ哲学に取り組み考える、そのプロセスは、〝哲学的思考とはどういうものか?〟のよき見本となっている。

つまり、本書の価値は、ニーチェ哲学に入門できるという点にあるのではなく、ニーチェ哲学を教材とした哲学的思考を初学者でも追体験できる点にあると言える。

よって、哲学的思考にもっとも関心があるなら、上記3冊よりも、本書『これがニーチェだ』を最初に読むのがオススメである。

ニーチェ哲学をはじめて学ぶ人にオススメの入門書

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