『哲学史入門』(Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ)納富信留、國分功一郎他 著

『哲学史入門』(Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ)納富信留、國分功一郎他 著

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目次

インタビュー形式で、研究者の情熱と好奇心、独自の視点にじかに触れ、知的興奮を楽しめる好著。こんな入門書を待っていた!

「こんな入門書を待っていた!」

思わずそう叫びたくなるような本が出た。

哲学史入門Ⅰ』『哲学史入門Ⅱ』『哲学史入門Ⅲ』(NHK出版)である。

他の入門書と何が違うかというと、第一に、インタビュー形式という点だ。

人文ライターの斎藤哲也氏がインタビュアーとなって、古代ギリシアなら古代ギリシアの、カントならカントの、というように、各専門分野の研究者へ質問を投げかける形で話が進んでいく。

このインタビュー形式が、読み手に対して、想像以上の知的興奮を引き起こす。

研究者のナマの言葉がそのまま文字になっているので、話し手の情熱や好奇心がダイレクトに伝わってきて、まるで話し手が目の前で語っているかのような疑似体験ができるのだ。

結果、こちらもすっかり興奮してきて、一気に読み通してしまうのである。

かつて、そんな読み方ができる哲学入門書があっただろうか。

哲学入門書といえば、無味乾燥な記述が定番で、読んでいて知的興奮を味わえるような本は、あっても数冊程度で、ほとんど皆無に近かった。

そうした点において、本書3冊は抜きん出ている。

さらに、他書と違う第二の点は、それぞれの話し手が、彼ら自身のオリジナルな考えや視点を語っている箇所が随所に見られるところである。

ちまたの入門書には、教科書たることを意識してか、その本が書かれた時点での最大公約数的な内容しか書かれていない場合がほとんどである。

著者独自の考えや視点が書かれていたとしても、コラムか脚注あたりに、ちょこちょこっと目立たぬ感じで記されていることがほとんどだ。

しかし、この「哲学史入門」シリーズでは、むしろ話し手の独自性がメインコンテンツとして扱われている。

読者が抱きそうな疑問を斎藤哲也氏が的確に投げかけることにより、話し手自身の問題意識がストレートに引き出されているため、読み手であるこちら側の「なぜ?」が解き明かされていくという知的興奮が味わえるのである。

西洋哲学史をざっと学んでから読んだほうが断然楽しめる!

と、このように書いてくると、誰が読んでも楽しめると思われそうだが、そうとは言い切れない。

第1巻の帯には「本物の知が、かくもわかりやすくて面白い!」と書いてあって、それは間違いないのだが、「面白い!」と心から思える人は、大学教養課程レベル以上の知識がある読者ではなかろうか。

少なくとも基本的な西洋哲学史の知識がないと、何がどうおもしろいのかわからない箇所があるからだ。

要は、西洋哲学の内輪の話だから、その内部事情をある程度知っていないと話についていけないのである。

もっとも、各章の冒頭には斎藤哲也氏の簡潔でわかりやすい解説があるし、わからないところは自分で調べながら読めば、時間はかかるかもしれないが、楽しめるであろう。

それでも、もしもぼく自身が今、知識ゼロの状態で、この3冊を読んだとしても、きっと楽しめないと思う。

やっぱり、西洋哲学史をざっと1度学んでから、もう1度読んでみようと思うにちがいない。

逆に言えば、あらかじめ入門程度の知識を身につけて読めば、帯の言葉どおりのおもしろさが味わえるということである。

なので、この3冊に関心があるけれども、知識ゼロな読者であれば、まずはテキストで西洋哲学史についてひととおり学んでから読まれることをオススメします。

そのほうが絶対に楽しめます!

下記リンク先の記事で西洋哲学史のオススメの入門書を紹介しているので、ぜひ参照してみてください^^

各巻各章の主な内容

『哲学史入門Ⅰ 古代ギリシアからルネサンスまで』

序章 哲学史をいかに学ぶか(千葉雅也)

哲学史を学び始めるにあたって、どのような学び方がいいのか?
どんな入門書を選べばいいのか?
なぜ哲学史を学ぶ必要があるのか?
哲学史上の概念や考え方を理解するために必要な態度とは?
哲学的に考えられるようになるには、どうすればいいのか?

第1章 「哲学の起源」を問う――古代ギリシア・ローマの哲学(納富信留)

「哲学の始まり」とはどういうことなのか?
「ソクラテス以前の哲学」が「初期ギリシア哲学」というくくり方へ変わってきたのはなぜか?
なぜイオニア地方で哲学が始まったのか?
パルメニデスの存在論をどう理解するか?
プラトンはソフィストを恐れていた?
なぜ「無知の知」ではなく「不知の自覚」なのか?
「不知の自覚」とイデア論の関係は?
図を使ったイデア論の説明はなぜつまらない?
アリストテレスはプラトン哲学をどう継承したのか?
四原因説で変化をどう説明するか?
ヘレニズム哲学の特徴は何か?
ヘレニズム哲学と現代に共通するものとは?
新プラトン主義の特徴は?

第2章 哲学と神学はいかに結びついたか――中世哲学の世界(山内志朗)

中世とはどのような時代だったのか?
アウグスティヌスの人間観とは?
アウグスティヌスの三位一体論とは?
聖霊とはどのような概念なのか?
なぜボエティウスは「最初のスコラ哲学者」と言われたのか?
なぜアンセルムスは「神の存在証明」を行なったのか?
アラビアから輸入されたアリストテレス哲学の影響は?
トマス・アクィナス『神学大全』は初学者向け?
アヴィセンナが中世スコラ哲学に与えた影響とは?
ドゥンス・スコトゥスの「存在の一義性」を理解するには?
「存在の一義性」と「このもの性」はどのように関連しているのか?
普遍論争にまつわる意外な事実とは?

第3章 ルネサンス哲学の核心――新しい人間観へ(伊藤博明)

なぜルネサンス期の哲学は軽視されるのか?
人文主義とは何か?
なぜ人文主義者たちはスコラ哲学に対抗したのか?
プラトン哲学の影響は?
フィチーノの「プラトン神学」とは?
ピーコ・デッラ・ミランドラの思想の特徴は?
ニコラウス・クザーヌスの異質さとは?
ジョルダーノ・ブルーノの宇宙論はスピノザの汎神論とどこが違う?
ルネサンスの思想はヨーロッパにどのように広まったのか?

『哲学史入門Ⅱ デカルトからカント、ヘーゲルまで』

第1章 転換点としての一七世紀――デカルト、ホッブズ、スピノザ、ライプニッツの哲学(上野修)

「大陸合理論」とくくることのデメリットとは?
17世紀の哲学の特徴は「絶対」?
デカルトが発見した「私」の正体とは?
なぜデカルトは「神の存在証明」を行なったのか?
デカルトとスピノザとライプニッツが考える「神」のあり方の違いとは?
ライプニッツの「最善世界選択説」の真意とは?
デカルトの機械論的自然観は中途半端?
スピノザとホッブズの政治哲学の違いとは?
スピノザの政治哲学の特徴とは?
ライプニッツのモナド論を理解するキモは?

第2章 イギリス哲学者たちの挑戦――経験論とは何か(戸田剛文)

「イギリス経験論」というくくりは有効か?
ベーコンとホッブズは経験論者か?
なぜ17世紀後半から18世紀にかけて経験重視の哲学者が登場したのか?
経験重視の哲学者たちは知識をゆるく考えた?
なぜトマス・リードの哲学は高く評価されたのか?
バークリの「存在するとは知覚されることである」はどこが常識的か?
経験重視の哲学者たちにとっての「神」とは?
バークリは自然科学をどう捉えていた?
バークリの言語論は先駆的だった?
戸田剛文氏が考える哲学史とは?

第3章 カント哲学――「三批判書」を読み解く(御子柴善之)

カントが大陸合理論とイギリス経験論を総合したというのは本当か?
「独断のまどろみ」とは何か?
ルソーから受けた影響とは?
「超越論的」とは何か?
「超越論的」と「超越的」はどう違うのか?
「理性」「悟性」「感性」「統覚」の役割とは?
アンチノミーとは何か?
なぜ定言命法は唯一なのか?
『純粋理性批判』と『実践理性批判』の関係は?
カント倫理学は義務論か?
カントは神をどう捉えていたか?
『判断力批判』とはどのような著作なのか?
道徳と美は共有可能なのか?

第4章 ドイツ観念論とヘーゲル――矛盾との格闘(大河内泰樹)

なぜドイツ観念論は難解なのか?
フィヒテ→シェリング→ヘーゲルという図式は眉唾?
フィヒテの「自我」とシェリングの「自我」はどう違う?
ヘーゲルの『精神現象学』に秘められたコンセプトとは?
ヘーゲルの弁証法の独自性とは?
アウフヘーベンの本当の意味とは?
ヘーゲルの政治哲学の動機とは?
スピノザがドイツ観念論に与えた影響とは?
なぜドイツ観念論は後世の哲学者から批判されたのか?
ドイツ観念論の現代的意義とは?

特別章 哲学史は何の役に立つのか(山本貴光、吉川浩満)

どうすれば過去の哲学者や哲学史を身近に感じられるか?
なぜ西洋哲学では神が問題となるのか?
西洋哲学の「思考の型」を使えるようになるには?
西洋哲学史をどうやって学ぶか?
なぜ哲学という学問の範囲を見直したほうがいいのか?
哲学の重要な仕事とは?

『哲学史入門Ⅲ 現象学・分析哲学から現代思想まで』

第1章 現象学――その核心と射程(谷徹)

現象学誕生の背景は?
フッサールとベルクソンの共通点とは?
現象学の原点となった19世紀末ウィーンの哲学状況は?
現象学的還元を理解するためのポイントとは?
フッサールの「超越論的」の意味は?
なぜ「志向性」が重要なのか?
カントの「構成」とフッサールの「構成」はどう違う?
「間主観性」とは何か?
メルロ=ポンティとサルトルの違いは?
なぜ現象学は後世の哲学に大きな影響を与えたのか?

第2章 分析哲学のゆくえ――言語はいかに哲学の対象となったか(飯田隆)

フレーゲの論理学が哲学に与えた影響とは?
「言語論的転回」とは?
なぜウィトゲンシュタインは過去の哲学を全否定したのか?
論理実証主義が誕生した経緯は?
論理実証主義と日常言語学派の違いは?
ウィトゲンシュタインが日常言語学派に与えた影響とは?
なぜ言語哲学は専門化していったのか?
論理学におけるクリプキの功績とは?
自然主義はどのようにして盛んになったのか?
日本における分析哲学の歴史は?

第3章 近代批判と社会哲学――マルクスからフランクフルト学派へ(清家竜介)

「社会哲学」とは何か?
ルカーチが「西欧マルクス主義の出発点」と位置づけられるのはなぜか?
フランクフルト学派の「批判理論」とは?
ベンヤミンは資本主義をどう捉えた?
ベンヤミンからホルクハイマー、アドルノへの影響は?
ハーバーマスはアドルノの何を批判したのか?
ハーバーマスの哲学の中身は?
ホネットは批判理論をどのように継承したか?
ホネットの承認論はヘーゲル『法の哲学』のアップデート版?
21世紀の社会哲学が対応すべき問題とは?

第4章 フランス現代思想――二〇世紀の巨大な知的変動(宮﨑裕助)

なぜ「現代哲学」ではなく「現代思想」なのか?
ソシュール、マルクス、フロイト、ニーチェ、ハイデガーが「現代思想の源流」と位置づけられるのはなぜか?
現象学とフランス現代思想の関係は?
構造主義者はポスト構造主義者?
フーコーの「権力論」とは?
ドゥルーズの「管理社会論」とは?
ドゥルーズとデリダの違いは?
「脱構築」の真の考え方とは?
なぜ精神分析は重要なのか?
なぜ精神分析にとって性は重要なのか?
「ポストモダン」という言葉にまつわる問題とは?

終章 「修行の場」としての哲学史(國分功一郎)

哲学史から哲学へ入門する意義とは?
カントが教える哲学にとっての哲学史の意味とは?
哲学史は哲学の「修行の場」?
哲学史以外にも「修行の場」はある?
「先生」の見方に従って哲学史を学ぶ意義とは?
難解なテクストに接するときのポイントとは?

『哲学史入門』(Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ)納富信留、國分功一郎他 著

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