ヘーゲル『精神現象学』をはじめて読む人にオススメの翻訳書&解説書

ヘーゲル『精神現象学』をはじめて読む人にオススメの翻訳書&解説書

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目次

『精神現象学』の読み方

ヘーゲルの主著と言えば、『精神現象学』だ。

もともとヘーゲルが学問の体系を構築するための基礎論として書いたのが『精神現象学』であり、ヘーゲルの最初の著作にして、その哲学の根幹をなす著作でもある。

そこには、ヘーゲル哲学の中心的な論理である「弁証法」のプロセスに即して、人間の精神が、さまざまな問題に直面しながら、見る対象をたんにそこに外在する存在だと素朴に信じる「意識」の段階から、「神」を概念として完全に把握する「絶対知」の段階へどのようにいたるかが示されている。

まさに、理性に絶大な信頼を置いた近代哲学の集大成的な思考が展開されていると言える。

だから、西洋哲学史においては重要な著作であって、哲学したい人ならぜひ読んだほうがいいのだが、文章は難解である。

その難解さは、現代の哲学者たちでも〝むずかしい〟となげく者がいるほどの折り紙つきである(汗)

特に、冒頭に「序文」と「序論」という2つの〝まえがき〟があるのだが、これが長くて、おもしろみがないうえに、むずかしい文章で、本論に行き着く前に挫折してしまいそうである(大汗)

でも、本論に入ると、小説風の叙述になり、なんとかついていけるのではないかと思う。

だから、哲学初学者は、本論の「意識」から読み始めるのがよいかもしれない。

また、それでもついていけないと思って挫折しそうになったら、「理性」の「B」を読んでみるとよい。

ここは個人と社会の問題をあつかった箇所で、思いどおりにいかなかったり、望まない結果になってしまったりするパターンが描かれていて、自分と重ね合わせて読むことができるからである。

このように、『精神現象学』は、他の哲学書とは少し違って、自分が興味をもてる箇所から読んでいける。

そうした読み方をしてみてもいいのではないだろうか。

オススメの翻訳書

作品社版

『精神現象学』の翻訳書はいろいろあるが、翻訳のわかりやすさで選ぶなら、作品社版である。

前回の記事「ヘーゲル哲学をはじめて学ぶ人にオススメの入門書」で紹介した『新しいヘーゲル』の著者である翻訳家・長谷川宏氏による意欲的な翻訳だ。

原文がむずかしい(と推測される)ので、ふつうの本を読むようにはページは進まないが、それでもかなりの意訳がされているようで、だいぶ読みやすくなっている。

研究者からの評価は二分されるが、本格的にヘーゲル研究を志すつもりではないのなら、作品社版がもっともオススメである。

ちくま学芸文庫版

少し腰を据えて『精神現象学』を読んでみようと思っている初学者にオススメするのが、ちくま学芸文庫版である。

翻訳者は、『西洋哲学史――古代から中世へ』『西洋哲学史――近代から現代へ』など数多くの著作がある哲学者の熊野純彦(くまの・すみひこ)氏だ。

原文への忠実さと読みやすさの両立を追求しているように思える。

つまり、作品社版にくらべれば、読みやすさは低減しているが、学問性は高いということになろう。

また、原著にはない小見出しがふんだんにつけられていて、話の筋を見失わずに読み進められる点は秀逸である。

ちなみに、哲学者の古田徹也氏は、「X」(旧ツイッター)で本書をベタ褒めしている↓↓↓

平凡社ライブラリー版

平凡社ライブラリー版の翻訳者は、主にドイツ哲学を研究していた樫山欽四郎(かしやま・きんしろう)氏(1907/5/1-1977/8/7)である。

ヘーゲルで卒論を書こうというような大学生であれば、平凡社ライブラリー版を参照するのがよいと思う。

決して読みやすいとは言えないが、研究者からの評価が高い翻訳で、参考文献のリストに安心して記載できる。

オススメの解説書

『ヘーゲルの精神現象学』

ヘーゲルの精神現象学』である。

著者は、ヘーゲル哲学研究の第一人者であった金子武蔵(かねこ・たけぞう)氏(1905/1/21-1987/12/31)だ。

第二次世界大戦前に『精神現象学』を完訳した人である。

その金子武蔵氏が長野県の南佐久哲学会で小中学校の教員向けに行なった講義を本にしたのが、本書『ヘーゲルの精神現象学』である。

話し言葉なので読みやすく、『精神現象学』の内容がかみくだいて要約されているから、『精神現象学』の副読本としてぴったりである。

ヘーゲル研究をめざす人にもオススメできる。

『超読解!はじめてのヘーゲル『精神現象学』』

まずはもっともとっつきやすい入門書を読みたいというのであれば、本書『超解読!はじめてのヘーゲル『精神現象学』』から読むことをオススメする。

著者は、『プラトン入門』『ニーチェ入門』など数多くの著作がある竹田青嗣(たけだ・せいじ)氏と、『哲学の練習問題』『哲学は対話する』など、やはり数多くの著作がある西研氏である。

その2人が、新書でありながら、『精神現象学』の本格的な読解にいどんでいる。

一部の哲学研究者からは〝底が浅い〟だの〝わかっていない〟だのといった批判があるが、『精神現象学』をこれだけ一般読者にとって身近にした功績は大きい。

『精神現象学』を読むための見取り図を、誰にでも理解できるように示してくれている。

最後まで興味をもって読み進められるであろう。

なお、より詳細な読解を求めるなら、同著者たちによる『完全解読 ヘーゲル『精神現象学』』を続けて読んでみるとよいだろう。

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