ニーチェ『ツァラトゥストラ』をはじめて読む人にオススメの翻訳書&解説書

ニーチェ『ツァラトゥストラ』をはじめて読む人にオススメの翻訳書&解説書

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目次

『ツァラトゥストラ』の翻訳・解説書【先に結論】

初めて全文を読むなら光文社古典新訳文庫版、内容をつかんでから読みたいなら『100分de名著』がおすすめです。訳注を重視する場合は中公文庫版、まず物語で触れたい場合は講談社まんが学術文庫版が向いています。

種類向いている人特徴
光文社古典新訳文庫版翻訳初めて全文を読む人現代的で読み進めやすい文体
中公文庫版翻訳訳注を確認しながら読みたい人詳しい訳注と格調ある訳文
講談社まんが学術文庫版漫画文字だけの原典が不安な人主要概念を物語からつかめる
『100分de名著』解説要点を知ってから原典を読みたい人超人・永遠回帰を身近に解説
『この人を見よ』関連書ニーチェ本人の説明を読みたい人著者自身が著作と思想を振り返る
『ツァラトゥストラ』の翻訳・解説書の選び方

迷ったときの組み合わせ:『100分de名著』で「神の死」「超人」「永遠回帰」の概要をつかみ、光文社古典新訳文庫版で本文を読むと進めやすくなります。

初心者向けの読み方

  1. 『100分de名著』または漫画版で、登場する概念と全体像をつかむ
  2. 読みやすさなら光文社版、訳注なら中公版を選び、まず一つの訳で通読する
  3. 理解を深めたい箇所だけ別の翻訳や『この人を見よ』と読み比べる

最初から複数の翻訳をそろえる必要はありません。まず1冊を最後まで読み、意味がつかみにくかった箇所を解説書や別訳で補う方法が現実的です。

『ツァラトゥストラ』はニーチェの主著

ニーチェには数多くの著作がある。

それらの著作を年代順に読んでいくことは、ニーチェの哲学の展開をそのままたどることと同じである。

最初の著作『悲劇の誕生』では、ショーペンハウアーの哲学とワーグナーの音楽に心酔し、彼らを「神」のように崇拝したニーチェが、ギリシア悲劇を題材に、芸術と文化の意味を求めた。

続く『反時代的考察』では、ヘーゲルを頂点とする「歴史主義」を批判し、芸術と文化にもとづく人間のあり方を求めた。

しかし、ワーグナーと決別し、それまでの理想が失われると、今度は一転して、『人間的、あまりに人間的』シリーズのなかで、自分自身がもっていた価値や世の中の価値を根本から疑うようになる。

そのうち、否定的なだけの感情から抜け出していくなかで、『曙光』『悦ばしき知識』を著し、またふたたび物事を肯定するようになっていく。

そして、ニーチェは、主著『ツァラトゥストラ』を書き上げることになる。

この著作では、ニーチェ自身が再構築した理想や価値が、「ツァラトゥストラ」というゾロアスター教の創始者の名を借りて(名前以外は本書とゾロアスター教とは何の関係もない)、新約聖書の文体をまねて語られる。

なぜそんな書き方をしたのかというと、ニーチェは、本書『ツァラトゥストラ』で、旧来の価値観や道徳観の根源であるキリスト教(の道徳)に代わり、神なき新しい時代の価値基準=生き方を提示しようとしたからだと言われている。

その新しい価値基準=生き方のキーワードとなっているのが、「神は死んだ」「超人」「永遠回帰」である。

本書『ツァラトゥストラ』の文体は、決してむずかしくはない。

でも、内容は難解だ。

そのため、本書『ツァラトゥストラ』は、人びとになかなか理解されなかった。

ニーチェがその後に著した『善悪の彼岸』『道徳の系譜学』は、本書『ツァラトゥストラ』の解説書として位置づけられる。

つまり、この2冊に書かれている内容は、すでに『ツァラトゥストラ』のなかに示されていて、その理解の助けとなっているのである。

ニーチェは、『ツァラトゥストラ』の内容を、なんとしてでも世に示したかった、あるいは後世に遺したかったのだろう。

『ツァラトゥストラ』が、ニーチェの主著たるゆえんである。

なお、『ツァラトゥストラ』は複数の出版社から翻訳が出ているが、岩波文庫版は『ツァラトゥストラはこう言った』、新潮文庫版は『ツァラトストラかく語りき』という表記となっている。

おすすめの翻訳・漫画版3冊

光文社古典新訳文庫版

向いている人:『ツァラトゥストラ』の全文を初めて読む人
読みやすさ:比較的読みやすい
選ぶ理由:現代的な文体で、詩的な文章をテンポよく読み進めやすい

もっとも訳がこなれていて、読みやすいのが、光文社古典新訳文庫版だ。

本書以前に刊行された翻訳書の文体は、どれも訳者である学者特有の〝論文のような文体の硬さ〟がまとわりついているが、光文社古典新訳文庫版は、よりカジュアルな文体となっている。

そのことが読みやすさにつながっているのだろう。

中公文庫版

向いている人:言葉の背景や重要箇所を訳注で確認したい人
読みやすさ:標準
選ぶ理由:格調ある訳文に加え、理解を助ける詳しい訳注がある

中公文庫版のウリは、充実した訳注にある。

光文社古典新訳文庫版は、文体がもっともこなれていて読みやすいのだが、やはり意味がつかみにくいところがある。

一方、中公文庫版は、ニーチェに関する知識がない読者を想定して、意味がつかみにくい、あるいは、素通りしてしまいそうな重要な箇所に適宜、注がつけられ、章末で確認することができる。

また、字体が大きめなのは、老眼が進んだぼくのような人間にとってはうれしい。

ひょっとしたら、光文社古典新訳文庫版で本文を読みながら、中公文庫版を副読本的に使うというのが、贅沢な方法だが、初学者には理想かもしれない。

講談社まんが学術文庫版

向いている人:文字だけの原典を読む前に、主要概念を物語で知りたい人
読みやすさ:やさしい
選ぶ理由:「神は死んだ」「超人」「永劫回帰」などを登場人物の生き方と結びつけて理解できる

いきなり文字だけの翻訳書を読むのはキツイと思うのなら、講談社まんが学術文庫版がある。

プロサッカー選手をめざす少年カツキが数々の挫折を味わいながら青年になっていく過程で、正体不明の謎の「おじさん」が現れ、「神は死んだ」「ニヒリズム」「末人」「超人」「永劫回帰」(マンガのなかでは「永遠回帰」ではなく「永劫回帰」と表記される)というニーチェの概念をカツキに教え、カツキは自己を超える努力をする生き方を選びとっていくというストーリーである。

ニーチェの概念を個人の生き方に落とし込むと、具体的にどう表現できるかというサンプルが示されていて、理解の大きな助けになる。

なお、講談社まんが学術文庫版のタイトルは、『ツァラトゥストラはかく語りき』である。

おすすめの解説・関連書2冊

『NHK「100分de名著」ブックス ニーチェ ツァラトゥストラ』

向いている人:原典に入る前に、重要な場面と概念を短く整理したい人
読みやすさ:やさしい
選ぶ理由:「超人」「永遠回帰」を軸に、現代の生活と結びつけながら要点をつかめる

著者は、『実存からの冒険』『哲学は対話する』など数多くの著作がある哲学者の西研氏だ。

NHK「100分de名著」ブックス ニーチェ ツァラトゥストラ』では、『ツァラトゥストラ』に書かれている内容のポイントとなる箇所を解説し、それをふまえながら、西研氏自身の考えも語っている。

そのため、『ツァラトゥストラ』に示されたニーチェの哲学を、グッと身近なものとして受け取ることができるのが大きな特徴である。

巻末には、精神科医の斎藤環(さいとう・たまき)氏との対談が収められている。

斎藤環氏の「超人」=「完璧なひきこもり」観は、とてもユニークで、ハッとさせられた。

『この人を見よ』

向いている人:ニーチェ本人が『ツァラトゥストラ』をどう位置づけたか知りたい人
読みやすさ:標準
選ぶ理由:第三者の解説ではなく、ニーチェ自身による著作と思想の振り返りを読める

本書『この人を見よ』は、当時の世間からほとんど認められなかったニーチェが、自分自身の哲学と著作を知ってもらう目的で著した自伝である。

そのなかで、ニーチェは、『ツァラトゥストラ』(や他の著作)をどのような構想と意図のもとに執筆したか、また、「超人」や「永遠回帰」といった概念がどのようなものであるかについて、自身の言葉で解説している。

これ以上の正確な解説はないであろう。

よくある質問

初めて読むなら、どの翻訳がおすすめですか?

読み進めやすさを重視するなら光文社古典新訳文庫版がおすすめです。分からない箇所を訳注で丁寧に確認したい場合は中公文庫版が向いています。

『ツァラトゥストラはこう言った』と『ツァラトストラかく語りき』は同じ本ですか?

どちらもニーチェの同じ著作です。出版社や訳者によって、題名の表記と文章の訳し方が異なります。

解説書を先に読んでもよいですか?

問題ありません。『100分de名著』などで主要概念を知ってから本文を読むと、詩的な表現のなかで何が語られているのかを追いやすくなります。

複数の翻訳を買う必要はありますか?

最初は1冊で十分です。まず通読し、特に理解を深めたい章が見つかった段階で、別の翻訳や訳注を参照すると無理がありません。

読む前にニーチェ哲学の全体像を知る

「超人」「永遠回帰」「ニヒリズム」などの基本的な考え方から整理したい場合は、先にニーチェ哲学を初めて学ぶ人向けの入門書4選を読むと、『ツァラトゥストラ』の位置づけが分かりやすくなります。

まとめ

  • 初めて全文を読むなら光文社古典新訳文庫版
  • 訳注を重視するなら中公文庫版
  • 内容を先につかむなら漫画版または『100分de名著』
  • ニーチェ本人の説明を読むなら『この人を見よ』

迷った場合は、解説書で全体像をつかんでから、読みやすい翻訳を1冊選んで通読してみてください。

ニーチェ『ツァラトゥストラ』をはじめて読む人にオススメの翻訳書&解説書

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