20世紀を代表する哲学書3冊|『存在と時間』『論理哲学論考』『イデーン』を比較

20世紀を代表する哲学書ベスト3は?

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目次

筆者が選ぶ20世紀の哲学書3冊【先に結論】

『存在と時間』『論理哲学論考』、そしてぼくが3冊目に選ぶ『イデーンI』。哲学の歴史を一つの順位で決められるわけではない。これは投票結果や公式ランキングではなく、20世紀に刊行され、異なる哲学の方向を切り開いた本という基準で選んだ、筆者の3冊である。

書名刊行主な問い初めて読む前に
存在と時間1927年「存在する」とはどういうことかハイデガー入門と翻訳比較
論理哲学論考1921年に初発表、1922年に英訳版言葉で世界をどう表せるか前期思想の解説
イデーンI1913年経験に現れるものをどう記述するか現象学の入門書
20世紀の哲学書3冊の選び分け

いずれも原典は難しいため、「3冊を順に買って通読する」ことが初心者の目標ではない。興味のある問いを一つ選び、入門書を手がかりに進むとよい。

この3冊を選んだ理由

以前、光文社古典新訳文庫の『論理哲学論考』を読み返したとき、収録されている野家啓一氏の解説「高校生のための『論考』出前講義」をきっかけに、「20世紀の代表作を3冊挙げるなら?」と考えた。ここで示すのはぼくなりの選び方で、世界哲学会議などによる実際のアンケート結果ではない。

選ぶ際に重視したのは、①20世紀に刊行されたこと、②その後の哲学に問いを残したこと、③存在論・言語の分析・現象学という異なる方向を見渡せること。学派や影響力の評価には異論があるので、以下は「唯一正しいベスト3」ではなく、哲学への入口として読んでほしい。

1冊目:ハイデガー『存在と時間』

問い:私たちは物事の「存在」をどう理解しているのか。1927年刊の『存在と時間』でハイデガーは、人間が日々の世界のなかで生きるあり方を手がかりに、存在の意味を問い直した。スタンフォード哲学百科事典の解説も、存在の意味への問いを本書の中心に置いている。

初心者の進み方:原典にいきなり挑むより、『存在と時間』の入門書・翻訳・副読本の比較で、最初に何を読むか確認するとよい。翻訳は一冊だけでも分量があるため、関心のあるテーマから進める。

2冊目:ヴィトゲンシュタイン『論理哲学論考』

問い:意味のある言葉は、世界をどのように表せるのか。『論理哲学論考』は、命題と論理的な形の関係を考えるヴィトゲンシュタイン前期の主著である。ドイツ語での初発表は1921年、英訳版の刊行は1922年。「世界と言葉が単純に一対一で対応する」というだけの本ではない。

初心者の進み方:光文社版には野家氏の出前講義があり、原典の難所を考える入口になる。『論考』から後期の『哲学探究』へどう変わったか知りたいなら、ヴィトゲンシュタインの入門書・解説書の比較も参考になる。

3冊目:フッサール『イデーンI』

問い:私たちは世界をどのように経験しているのか。1913年刊の『イデーンI』でフッサールは、「世界がある」という普段の前提をいったん括弧に入れ、経験に現れるものを記述する現象学の方法を示した。世界の存在を否定する、という意味ではない。この問題意識は、ハイデガーなどその後の哲学者にも影響した。

みすず書房の日本語版は『イデーンI-I』と続く巻に分かれている。巻数や版を確認して選んでほしい。ぼくも以前、哲学の予備知識がないまま『イデーン』を開き、すぐに読めなくなった。まず入門書で「現象学的還元」などの言葉をつかむほうが進みやすい。

3冊目の別候補は『哲学探究』?

3冊目には、ヴィトゲンシュタイン後期の『哲学探究』(1953年刊)も有力だ。『論理哲学論考』で重視した表現の問題から、言葉が使われる場面へ問いを進め、後の哲学に大きな影響を与えた。ただ今回は、前期と後期で同じ著者を二冊挙げるより、現象学という別の方向も示したいと思い、『イデーンI』を選んだ。

マルクスの『資本論』やニーチェの『ツァラトゥストラ』は、20世紀への影響という点で外せない。しかし、いずれも刊行は19世紀である。「20世紀に刊行された本」という今回の基準では候補から外すだけで、その価値を低く見るわけではない。『ツァラトゥストラ』に関心があれば、翻訳・解説書の比較を参照してほしい。

『イデーンI』に進むための現象学入門書2冊

原典が難しいと感じるなら、先に入門書を一冊選ぶ。概念を平易に理解したい人は竹田青嗣氏の『現象学入門』、フッサールの生涯と思想を一緒に知りたい人は加藤精司氏の『フッサール』。二冊を両方買う必要はない。

竹田青嗣『現象学入門』

向いている人:「現象学的還元」「ノエシス/ノエマ」といった言葉の輪郭を、平易な説明でつかみたい人。NHK出版の紹介によれば、用語集も付いている。ぼく自身、原典でつまずいたあと、この本に助けられた。

加藤精司『フッサール』

向いている人:抽象的な概念だけでは入りにくく、思想が生まれた背景も知りたい人。清水書院の紹介も確認できる。「人と思想」シリーズらしく、生涯と思想をあわせて読む入口になる。

よくある質問

この3冊は世界哲学会議の投票結果?

違う。光文社版の解説を読んだ筆者が、自分の基準で考えた3冊であり、実際の投票や公的な順位ではない。

初心者は3冊を全部読むべき?

全部を読む必要はない。存在、言葉、経験のどの問いが気になるかで一冊を選び、まずは入門書から始めるとよい。

なぜ『イデーンI』を3冊目にした?

20世紀に刊行され、現象学という重要な方向を示したから。『哲学探究』も有力だが、異なる著者と学問の方向を見渡すため、今回はフッサールを選んだ。

『イデーン』から読み始めてもよい?

読んでもよいが、用語と議論が難しい。竹田氏の『現象学入門』などを先に読んでから、気になる箇所を原典で確かめると挫折しにくい。

まとめ

筆者の選ぶ3冊は『存在と時間』『論理哲学論考』『イデーンI』。いずれも難解だが、存在・言葉・経験という三つの問いから20世紀哲学を眺められる。最初の一歩は原典を買いそろえることではなく、関心のある一冊とその入門書を選ぶことだ。

20世紀を代表する哲学書ベスト3は?

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